劇場公開日 2025年11月29日

「分かり合うってどういうこと?」みんな、おしゃべり! Noriさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 分かり合うってどういうこと?

2025年12月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

斬新

初日の最終上映回に鑑賞。舞台挨拶なしが確定しており、作品のみに集中できる環境ではあった。

ちょっとした誤解から対立が生じ、先入観やコミュニケーション不良から、その対立が先鋭化する。個人間の争いが、その個々の有するアイデンティティの基盤となる集団間の争いへと発展し、引くに引けない状況へ陥る。
この物語は、小さな街の、小さなコミュニティの話だが、この小さな争いが思いもかけずどんどん増幅していくのが、人間社会の性なのではないかと思う。そして、昨今のsns興隆により、その拡散スピードは手がつけられないものとなっている。群衆が世の趨勢を決定するのは、今も昔も変わらないのかなと思うし、コントロールできないまま突き進んでいくのだろう。

聾学校では全く聞こえない者と、少しは聞こえている者との壁があり、クルド人社会でもトルコ語話者とそうでない者、クルド語原理主義者で差異があり。手話ができる者のコミュニティでも、それぞれの属性により軋轢は生まれる。この世は元々カオスなのだ。そのカオスの中の調和、綱渡りを人間は試みてきたし、今も試みようと努力する者がいる。

この映画の結末、着地点は現実ではないけれど、河合監督が求める理想の姿なのだろう。その理想像を遠くに見据えて、では今この現実の中で、どのように我々は他者と接していくのか?個々人の、日々の姿勢が問われることになる。それぞれが、自分たちのコミュニティの殻を破って、ほんの少しでも他者と触れ合い、理解しようと努めることができたなら。未来は明るいものになると思うのだが。理想論に過ぎるのだろうか。

感想を書いた今から、入手したパンフレットを読む。何が書かれているのか、脚本はどんなものだったのか、とても楽しみだ。

Nori