「めちゃくちゃ面白かったですが……」みんな、おしゃべり! 紫音さんの映画レビュー(感想・評価)
めちゃくちゃ面白かったですが……
東京国際映画祭にて
映画『みんな、おしゃべり!』を観てきました。
もし宇宙人が地球を侵略したら——そんな仮定のもと、世界各国が心と言葉をひとつにして立ち向かおうとする姿を描いた、ユーモアあふれるコメディ作品でした。SFの名作『未知との遭遇』や『インデペンデンス・デイ』を彷彿とさせるパロディ要素も散りばめられ、笑いの中に深いメッセージが込められていたように感じます。
物語の根底には、かつて人類がひとつの言語を共有していたという神話的な記憶——バベルの塔の崩壊によって言葉が分断され、やがて国や文化の違いが対立や戦争を生むという歴史的な連想がありました。これは、ろう者の言語においても同様で、言葉の壁が誤解や衝突を生む現実をも映し出しています。
だからこそ、平和に向かうためには「言葉の壁をなくすこと」が重要であり、映画では子どもたちがそれぞれのアイデンティティを持ちながらも、互いに理解を深め、心をひとつにしていく姿が印象的に描かれていました。宇宙人の登場は、地球の多様性を超えて、広い宇宙へとつながる希望の象徴として機能しており、未来への哲学的なメッセージが込められていたと思います。
ただし、テンポがやや冗長で、映像や照明、編集の面では粗さが目立ち、惜しい部分もありました。もしこれらの技術的な要素がもう少し洗練されていれば、より完成度の高い作品になっていたことでしょう。
とはいえ、テーマ性や挑戦的な構成には敬意を表したいです。とても頑張った作品だと思います。
コメントする
