「介護を通じた人々の在り方と関わり方を考えさせられる」また逢いましょう 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
介護を通じた人々の在り方と関わり方を考えさせられる
主にデイケア施設を舞台に物語が進行する、やや地味めな映画ではある。とはいえ、老父の大けがをきっかけに帰省した娘の視点で、介護が必要な人たちの心情や、施設職員らが抱えるさまざまな思いも描きつつ、すべての人にいずれ訪れる老いや障害による衰えや死について考えさせる内容は貴重だ。
プロデューサーや自主映画監督として実績のある西田宣善の劇場映画監督デビュー作だそう。単館系の小品の趣ではあるが、主演の大西礼芳をはじめ、中島ひろ子、カトウシンスケ、田山涼成ら主要キャストの演技は安定感があり、短い出演ではあるが筒井真理子、田中要次らも華を添える。大西は劇中の漫画やピアノ演奏も自ら手がけたといい、その多才ぶりにも驚かされる。
診療所所長でデイケア施設も運営する伊藤芳宏氏の著書が原案で、台詞や作文などの中に出てくる生死や哲学についての言葉が、おそらく元のテキストの影響で観念的になったり、説明調になったりしたきらいはあるかもしれない。ともあれ、生きるとは、死ぬとは、そして人が支えたり支えられたりして共生することについて、改めて考えるきっかけをもたらす意欲作であり、作り手たちの高い志を尊敬する。
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