劇場公開日 2025年7月12日

「男性の愚かな弱さと女性のしなやかな強さに眩暈がしました。」黒川の女たち のりたまちびさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0男性の愚かな弱さと女性のしなやかな強さに眩暈がしました。

2025年8月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

難しい

昭和40年代生まれの私にとって、第二次世界大戦は、過去であり、歴史の授業で学ぶものでした。
満州という言葉は知っていましたが、それが何か、明確に理解はしていませんでした。
そして、そこに希望を抱いて赴いた日本人が、どんな末路を辿ったのかも。

「性接待」がどういう意味かは、知っています。
けれど、満州撤退時、村民が無事に日本に帰るために、共に暮らしてきた村の若い女性たちを護衛するソ連兵に差し出すなんてことが行われていたことに衝撃を受けました。
選ばれたのは、数えで18歳以上の女性15名。
彼女たちは、その場に行くまで、お酒を注いだりするような接待だと思っていたのです。
この時代なら、皆さんきっと男性経験もないでしょう。
このむごさを、段取りした男性たちは、想像できないのでしょうか。
また、彼女たちの母親は、これに同意したのでしょうか。
私には娘はいませんが、母親だったら、娘の代わりに自分がと思わないのでしょうか。

日本に帰ってから、この「性接待」そのものがなかったことにされ、皆のために身を犠牲にした女性たちが貶められる状況に、胸が痛くなりました。
むしろ、日本に帰国してからの方がつらかったという女性の言葉が、心に沁みました。

私は、危険な目に遭ったことも、ひもじい思いをしたこともありません。
けれど、今、この瞬間も、争いは世界中で起き、亡くなっていく方がたくさんいます。
黒川の女性たちのような、弱い立場の人たちが虐げられているという状況は、過去の話ではありません。
こんなに強烈に、見て見ぬふりをせず、向き合わなきゃと思ったのは、初めてです。
まず、乙女の碑に、お参りに行きます。

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のりたまちび