「地味シブな中年男女たちが織りなす珠玉の傑作」カーテンコールの灯 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
地味シブな中年男女たちが織りなす珠玉の傑作
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名作『セイント・フランシス』のチームによる、一見シンプルで飾り気のない人間ドラマなのだが、思いがけず巧妙に構築された脚本で、少しずつ明かされる情報が多く、説明しようとするとすぐにネタバレになってしまう。これは困る。地味だからと見過ごすのは非常にもったいない稀有な映画だというのに、説明を少し失敗するだけで稀少でそこはかとない魅力を減じてしまうのだ。とりあえず出だしはいい安い。家庭に問題を抱えている偏屈な中年男が、町の劇団が上演する「ロミオとジュリエット」に参加することになり、なんとロミオ役に選ばれてしまう。その先には劇団の人たちとの交流や、家族が抱えている複雑な事情が明かされていき、「ロミジュリ」の物語と幾重にもリンクしながら、ほんのりとした希望へとたどり着く。いやあ、オーソドックスな感動話といえばそれまだなのだが、繊細に丁寧に作り上げることで、語り尽くされた物語もたちまち息を吹き返す。それは古典である「ロミジュリ」が何度も上演され、映像化され、語られ続けていることにも似ているのかも知れない。
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