劇場公開日 2025年9月12日

「人格破綻の塀の上」Dear Stranger ディア・ストレンジャー flushingmainstさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 人格破綻の塀の上

2025年10月12日
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鑑賞方法:映画館

「人格破綻」というキーワードが真利子哲也作品の矜持か。その塀の上を歩いていて破綻側に大きくバランスを崩す人間を描き切ったり、また堕ちた破綻者からこれでもかと被害を被る弱者を描いたり…何れにせよ、度を過ぎた表現で我々の人間性もその都度試されてきた。さて、今回は…試されるには違いないのだが、実に洗練されているようだ。
破綻を内包しながら必死にハイソな家庭を保持する夫婦にガンバレガンバレとエールを送りながら物語は進んでいく。そして作者は、我々が同化した頃を見計らって主人公夫妻に取り返しのつかない瑕疵を作らせてしまう。ほとんど同一化していた我々の良心や誠意こそがここで問われる事になるのだ。展開としてタイミングとして実に秀逸に感じた。この瑕疵を背負って以降、バランスを崩しながら塀の上を歩いているのは我等なのだから、もう眼を離す事はできない。どんな裁断が下るのか。なんだか情緒的な人形劇さえも苛々として見ていられないのは、真利子哲也監督の思う壺なのだろうか。

flushingmainst
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