ベートーヴェン捏造のレビュー・感想・評価
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英雄をプロデュース
わたしは広告屋なので、毎日のように企業や商品の美辞麗句をせっせと量産してきた身。企業や商品をあらゆる角度から観察し、関係者すべてにインタビューし、酸いも甘いも理解した上で、徹底的に惚れ込んで、良いことだけがより良く伝わるように。都合の悪いことは無かったことに。そんな毎日を送っているので「我こそが真実のベートーベンを知っている」と豪語するシンドラーのねじれた気持ちはよくわかります。
逆の立場で登場する真実を追求するジャーナリスト、セイヤーの熱意には、誰のための正義かわからんけど本当のことを伝えることが飯の種な文春味を感じたり。
つまりこれベートーベンの伝記を借りたメディア操作の内側の暴露話とも読めたりします。
にしてもキャストがありえん豪華だし、衣装にも小道具にもたっぷりお金かかってます。全部スタジオで撮るからロケモノとはお金の使い所が変わってくるのかもしれませんね。強いて言うなら全体に絵本的ファンタジーなのでLEDバックのウィーンの街並みは前半で挟んだイラストを使っても良かった気もしますが…。
とはいえたいした違和感もなく外国人を日本人が演じてることに日本映画の可能性を感じましたね。
嘘つきはコピーライターのはじまり。
嘘つきはプロデューサーの始まり。
小川で見かけたメダカの話をそのまま話すより、クジラを見た話に盛ってしまう方が楽しいと思ってしまうわたしには色々考えさせられる映画でした。
それではハバナイスムービー!
偉人の私生活を詮索することは「利にならない」
配役全員日本人で日本語で会話するということで、パロディかコメディを期待すると肩透かしを喰らいます。だからこそ低評価が散見されるのかもしれません。
内容的にはNHKーBS辺りのドキュメンタリーに似ているかもしれませんが、「フィクションも散りばめられている」との断り書きもある通り、ドキュメンタリーとまでは言えないのでしょう。
この手の偉人の裏話や私生活暴露系の書籍は昔から珍しいものではありませんが、せいぜいトリビア的な扱いに留まるものです。実際、偉人が残したものと較べたら「だからどうした」でしょう。仮に私生活がどんなにとんでもなく、ゲスであったとしても、なし得たことや残したものの偉大さは変わらないのですから。
むしろ、どんなに今までの実績が大きくても、言動に問題があったとみなされると、全てが否定されてしまうような現在の方が恐ろしいかもしれません。
しかも、残した作品も時代とともに変化するものです。実際、特に第九はじめとする管弦楽曲ですが、現在の私達がよく耳にするオーケストラのスタイルが確立されたのは19世紀末頃なので、ベートーヴェンが存命中に奏でられた管弦楽曲は小規模であっさりしたものだったと言えます。
『シンドラーのリソウ』(笑)
『ベートーヴェン捏造』観てきました。
よく、こんな発想の物語ができたナーと思ったら、ちゃんとノンフィクションの原作があったんですね……、納得。原作がまず、すごい。
そして、この原作を日本人キャストの映画に、よく創りあげたなぁ。さすが。
とても楽しめた。
劇伴で挿入されるクラッシック音楽も良かった。
(“イノッチ‘’や、遠藤憲一さん、坪倉さん、野間口さんなどなど……)音楽家に扮した俳優さん達が登場するたびに、“クスッ”と笑いがこぼれる連続だった。
‘’ギャグ路線の映画‘’かな、と、勝手に思っていたけれど…
「現実なんてどうだっていい。理想こそが真実だ!」と、シンドラーが叫ぶ。
話が進むにつれて、
「これって…、良質の“ミステリ”映画なんでしょ…!」と、思いを改めました。
『「真実」は人の数だけあるんです(「事実」はひとつ)』という(「ミステリと言う勿れ」の久能整君の言葉を思い出した。
“深い”映画でした。観てよかったです。
お話は面白かったのだけど
キャストも豪華、皆さんそれぞれ役の雰囲気にマッチしていてストーリーも面白いのだけど。なにか物足りない。独白に近い形で映画が進んでいくからかもしれない。バカリズム作品の面白さは、セリフの妙、会話の自然なリズムと絶妙な間と無意識のテンポが創り出す面白い空気感がポイント、とスクリーンを見ながらも考えた。独白の後ろでちょっと面白そうなやり取りがあるみたいだけど、あくまでシンドラーの説明がメインとされているので、面白さがなかなか広がらない。俳優同士の相乗効果で盛り上がる、のような感じが残念ながらない。まあ、シンドラーの思いや動機については本人ご説明するしかないのかもしれないが。ちょっと残念な感じがした。
染谷将太の怒り爆発の演技が凄かった。独白説明みたいなものがメインの進行にあって、このシーンだけ、互いに対峙する様子がしっかり描かれているので、感情の爆発が普通に引き立っていたように見えた。
普通にドラマと会話で紡いで行ったほうが面白かったのでは…と考えてしまった、ちょっと残念。
バカリさん好きならね
ギャグにしないほうがよかったのでは?
脚色された偉人伝?
ベートーヴェンの偉業は決して色褪せない
バカリズム脚本はどれも好き。
古田新太のベートーヴェンのキービジュアルがハマりすぎ。
と期待していた。序盤ベートーヴェンが死ねまでは、クスッと笑える所が多々あり、ちゃんと面白かった。
しかし中盤の中弛みがエグい。心の声ばかりで展開もそんなになく、退屈した。
バカリズムなので、コメディかと思いきや、そうでもない。
ただラストは良かった。変に主題歌をつけずにクラシック一本にしたのも良かった。
バカリズム脚本ということで期待すると少し違うかも。
音楽の伝道師のような中学の音楽教師に語らせるメタ構造が絶妙 ベートーヴェンの残した音楽へのリスペクトも忘れておらず なかなかの良作
「ベートーヴェン」「捏造」という二つの単語を聞いて思い出したのは10年ちょっと前のある事件です。NHKのある番組で、耳が聞こえぬ作曲家、日本のベートーヴェンの奇跡の旋律、みたいな紹介をされた作曲家がいました。けっこうな反響を呼び、私もタワーレコードに彼のCDを試聴しに行ったぐらいです(でも、これだったら、ホンモノのベートーヴェンのほうがはるかにいいよな、といったレベルではありましたが)。で、その後、実は彼にはゴーストライターの作曲家がおり、多少の障がいはあるものの耳が聞こえないのも嘘だったことも判明して、彼の名声は一気に地に堕ちたわけです。これこそ、正真正銘の捏造です。
さて、この作品の原作「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」は未読ですが、作者の かげはら史帆さんがラジオ番組の特集でアントン•シンドラーについて語っているのを聴いたことがあります。ベートーヴェンに関する最新の研究で、シンドラーがこの大作曲家のイメージ作りに大きく貢献していることが分かってきた、ということでした。交響曲の出だしの🎵ジャジャジャジャーンの意味を尋ねられたベートーヴェンが「運命はこのようにして扉をたたくのだ」と答えたという逸話はシンドラーの捏造とのことです。でも、これってけっこう見事なキャッチコピーじゃないですか。この「捏造」によって、ルートヴィヒ•ヴァン•ベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調 作品67は “交響曲「運命」” になったわけですから。英雄とかカリスマとか言われている人の人生にはこういった捏造エピソードがいろいろあると思います。まあでも、シンドラーさんの場合は、貴重な歴史的資料を改竄してまで計画的に捏造を実行した確信犯で、しかも本人に頼まれたわけでもなく個人的に熱狂的に崇拝してたからそうした、ということなので、後世の研究者からしてみれば興味津々のお話で、200年以上たってから、遠い東洋の異国で映画のネタにされるのもむべなるかな、といったところでしょうか。
さて、この作品はそのタイトルやポスター•ビジュアルからすると、え? といった感じで、ある中学校の教室風景からスタートします。で、生徒のうちのひとりの男の子が忘れ物に気がついて行った音楽室で音楽教師(山田裕貴)に呼び止められ、ベートーヴェン談義が始まります。そこから、200年ほど前のベートーヴェンの時代に入って、その音楽教師がベートーヴェンの秘書だったアントン•シンドラー、中学の校長先生(古田新太)がベートーヴェンに扮し、その他のキャストを中学の先生たちが演じるという設定にしてあって、なるほどこれなら200年ほど前の西洋人を日本人が演じてもよいかなと妙に納得してしまいました。クセ強めのキャストが出てきて19世紀の西洋人を大マジメに演じるのはなかなかの見ものでもあります。
この作品で脚本を担当したバカリズムに関してですが、TVドラマの『ブラッシュアップライフ』や『ホットスポット』を観て、その達者ぶりに感服することしきりだったのですが、この映画でも、さすがだと思いました。なんか、TV、映画というメディアのそれぞれの特性を理解した上でアプローチの仕方を使いわけてるのかなとも感じ、あらためて才能のある人だなと感じ入った次第です。
私は高校生の頃にロマン•ロランの「ベートーヴェンの生涯」を読みましたし、「不滅の恋人」とか呼ばれている ベートーヴェンの宛先不明のラヴレターにていての本も読んだこともあります。もしや、と思ってwiki の「不滅の恋人」の頁でチェックしてみたのですが、くだんの「明らかに送られなかった手紙」は彼の死後、持ち物の中から発見され、アントン•シンドラーが手元に置いていた…とのことで、ここでアントン•シンドラーの名前を見つけてドキリとしました。でも、この手紙はベートーヴェン本人の直筆だと思われているようで、今では宛先の女性もほぼ特定されているとのことです。シンドラーさん、捏造ばかりではなく、後世のベートーヴェン研究に貢献もされてるんですね。
まあシンドラーさんだけでなく、上に挙げたロマン•ロランさんなんかもベートーヴェンのイメージ作りには貢献しているわけで、日本人でこういった例はないかと考えていたら、坂本龍馬のことが頭に浮かびました。幕末を語る上で欠かせない人物なのですが、歴史の教科書にはほぼ登場しません。薩長同盟は龍馬がいなくても成立してたのではないかとも言われてますし、彼が起草したとされる「船中八策」も明治以降に彼の伝記を作るために創作されたとする説が有力だとのことです。でも、彼には、まずは彼についての小説を書き、彼がいかに魅力的な人物かを伝えてくれた作家の司馬遼太郎という、言わば名プロデューサーの存在があり、その後には、NHKの大河ドラマを始めとする数々のドラマがあって、歴史上、特に有名な人物になっていったわけです。ましてや音楽史に燦然と輝く業績を残した大作曲家の場合をや……
ベートーヴェンの場合は、この映画を観た後もサントラを聴いてみたりすると、やはりさすがだなと映画の余韻に浸れます。残したものが偉大過ぎてまあシンドラーの気持ちもわからんわけでもない、本人がたとえ手がにゅるっとした小汚いおやじでもその音楽を聴けば、ははーっ、参りました、となるもんな、といったところでしょうか。
ということで、この映画は、ベートーヴェンの音楽へのリスペクトは忘れてないと思うし、歴史研究の面白さも見せてくれる良作だと思います。
昔はシントラーだったが
割り切ったわかりやすさ
シンドラー良いキャラです
名プロデューサーかオタクか
「バカリズム脚本」に期待をかけすぎるのも考えもの
原作は未読。ノンフィクションの書籍をどこまで面白くできるのか楽しみにしていた。音楽室で語られるベートーヴェンの人物像とその捏造疑惑。ドラマとしてのこの構造のおかげで、ベートーヴェンや数々の有名な音楽家たちが日本語で話していても違和感が少なかった。うまい作りだ。
ただ、笑えるところがあまりない。著名な音楽家たちがちょっぴりブロークンな日本語で等身大の会話を繰り広げる面白さはある。でも、それ以上のものはなかった。もしかして世間のイメージがどこまで真実なのかと問いかける物語だったのか?ちゃんとした話だし、ある程度史実に基づいているのだろう。でも、だから?なのだ。そんなものを観たいと思ったわけではない。真面目なノンフィクションをコメディテイストに仕上げようとしたこと自体、コンセプトのブレを感じる。
そして、「バカリズム脚本」という言葉に、多大な期待をかけるのも考えものだなと感じる。構成がうまくてセリフも効いていて、伏線回収もうまく、そしてちゃんと笑いもある。実際にそんな面白いドラマや映画をいくつも作ってきたし、世間的にも人気がある。でも、たまにはほどほどの作品が出てくることがあるということ。それを受け入れなければと思った。
どういう狙いの企画???
劇場宣伝で、古田新太ブシが面白そうな期待を抱かせたのと、「バカリズム脚本」という言葉でさらに期待を膨らませて観賞したのだが・・・
【物語】
とある高校で、音楽室に忘れ物をした男子生徒が放課後の音楽室に向かうとそこでは音楽の先生(山田裕貴)がピアノでベートーヴェンの曲を弾いていた。先生は手を止めて「コーヒー飲むか?」と誘い、コーヒー飲みながらベートーヴェンの話を始める。
ウイーンで暮らす名も無い音楽家アントン・フェリックス・シンドラー(山田裕貴)は幼い頃からベートーヴェンに憧れていた。ある時、所属する楽団のイベントにベートーヴェン(古田新太)が出席する。勇気を出してベートーヴェン声を掛け、大ファンだと伝えたことがきっかけで、ベートーヴェンの秘書になる。
必死にベートーヴェンに尽くしたアントンだったが、2年ほどでクビに。しかし、それでもベートーヴェン愛は消えず、しばらくしてベートーヴェンが亡くなると、シンドラーは人間的にはクセの有ったベートーヴェンを人間的にも「偉大なる音楽家」としてのイメージを仕立て上げようとする。
【感想】
劇場宣伝では珍しく(初めてみたかも)本編映像が皆無だったので、作品の空気は全く知らずに観始める。学校から始まるという意表を突いた冒頭シーン、「おお、こんな作りなのね」と滑り出しは上々だった。
いよいよ、ウイーン編となり、
「舞台はヨーロッパでも全て日本人役者なのね」となる。
しかし、これは半分予想できたけど、日本人俳優が恥ずかしげもなく白人の役を演じる作品と言えば“のだめカンタービレ”と“テルマエロマエ”が思い浮かぶ。いずれも傑作コメディーだ。
これに古田新太というキャスティング、バカリズム脚本。これだけ揃えば99.9%の人が本作も傑作コメディーか? と期待するだろう。
が、その期待は見事に裏切られる。「いつ笑わせてくれるのか?」とこちらは身構えているのに、(わずかな笑いはあるものの)全然コメディーはやって来ない!!
最後まで観て、「一体何を作りたかったのか?」と思ってしまった。
これが洋画で、アントン・フェリックス・シンドラーという無名の男に光を当てたシリアスな作品だったら、「こんな男がいたんだ」とそれはそれで面白かったと思うのだが、なんで日本で、古田新太使って、バカリズムに脚本を書かせて・・・
何を作りたかったのか??? 企画した人に聞いてみたい。俺には全く持って、半端な作品としか思えなかった。
ものすごくガッカリしたのだが、1つだけなるほどと学んだことがある。
捏造や嘘は、普通は「真実をつかんで白日の下に晒すべきもの」と思いがちだが、必ずしもそうではないということ。
捏造や嘘で傷つけられたり、損害を被った人が居る(真実でない誹謗中傷を受けたり、価値の無い物を買われたりした)場合、真実を明かされるべきで、本人も周囲もそう努力することに利が有る。しかし、「賞賛や賛美が事実以上」の場合はどうだろう?
その嘘によって権力を手にして悪用したり、商品の価格を不当に吊り上げたりしているならなら別だが、ある人が過剰に賞賛されて、多くの人に過剰に愛されていたとして、「真実はこうだ」と明かしても誰も幸せにならない。それは妬みでしかないかも知れない。
人間、誰も知らない真実を知ると皆に言いふらしたくなるものだが、「それで誰か幸せになるか?」を考えて行動を判断すべきなのかも知れないと。
奥が深い…
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