ベートーヴェン捏造のレビュー・感想・評価
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愛ゆえの虚像
■ 作品情報
監督は関和亮、脚本はバカリズム。原作はかげはら史帆のノンフィクション「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」。主演は山田裕貴、共演に古田新太、染谷将太、神尾楓珠など。
■ ストーリー
19世紀ウィーンを舞台に、音楽史に刻まれた天才音楽家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの実像と、後世に伝えられる崇高なイメージの間に横たわる真実が描かれる。難聴のハンディを乗り越え数々の名曲を残したとされるベートーヴェンだが、実際は下品で小汚い人物であった。彼の秘書であるアントン・シンドラーは、どん底にあった自分を救ってくれたベートーヴェンに対し、純粋な憧れを抱き献身的に仕える。しかしベートーヴェンの死後、その「真の姿」が世に出ることを恐れたシンドラーは、彼を「聖なる天才音楽家」へと捏造していく。この壮大な嘘は、若きアメリカ人ジャーナリストのセイヤーによって追及され、真実をめぐる情報戦が勃発する。
■ 感想
本作を観て、まず驚かされたのは、私たちが長年抱いてきたベートーヴェンのイメージが、実は一人の男の「捏造」によるものだったというセンセーショナルな事実です。この一点だけでも、映画を観る価値は十分にあります。その歴史的スキャンダルを、実にわかりやすいエンターテインメントとして昇華させている手腕は実にお見事です。
キャスティングも非常にユニークで、日本人俳優陣が西洋の人物を演じる絵面が、なんともシュールで笑いを誘います。ズラや衣装、そしてCGを駆使した背景が、どこか無理やり感を演出しつつも、それが作品全体のユーモラスなトーンと見事に調和しています。
そんなコミカルな演出の中でも、山田裕貴さん演じるシンドラーの心情の変化には引き込まれずにはいられません。ベートーヴェンへの純粋な献身から始まった彼の行動が、しだいに確執を生み、そしてベートーヴェンの死を経て、いびつな愛情から狂気へと変貌していく様は圧巻です。敵対勢力の死をきっかけに暴走が加速するシンドラーの熱演は、まさにこの映画のハイライトと言えるでしょう。
シンドラーの物語を軸に、古田新太さん、神尾楓珠さん、染谷将太さんの三人がリレー形式で物語を牽引していく構成も巧みで、歴史の真実と虚構、そして人間心理の深淵を、時に笑いを交えながら描き出している点はおもしろいです。
ただ、脚本がバカリズムさんということで、もっとシュールでコミカルな笑いがふんだんに盛り込まれているかと期待していたのですが、そうでもなかったです。むしろけっこう真面目な展開で予想とは少々異なる印象の作品です。
【”シンドラーのリスト”今作はベートーベンを敬愛する秘書が真実を知る者が次々に亡くなって行く中で、息を吐くように彼の人生を捏造する様を、ナントキャスト全員日本人俳優で製作したシニカルコメディである。】
ー 私は、歴史上の有名人物の逸話は、殆どが嘘だと思っている。
例えば、戦で疲れ切ったナポレオンがベッドで寝ている鼻先に、家臣が悪戯でブルーチーズをぶら下げたら、”ジョセフィーヌ、今宵は十分じゃ・・。”と言ったとか(艶笑話で有名ですね。)、日本でいえば、織田信長が本能寺で炎に撒かれ最期を悟った時に、「敦盛」を”人生50年・・。”と舞ったという話などは、誰も観ていないし、絶対に嘘だと思う。
本当は”あちちち!蘭丸はおらんのか!おのれ、光秀!”などと、見苦しくドタバタしたのだろうと思っている。
あとは、これはある作家が書いていたのだけれども、板垣退助が何度も暗殺未遂されそうになった時に言ったという”板垣死すとも自由は死せず!”と言う格好良い言葉も、嘘っぽい。絶対に”イテテテ!医者を呼べ!”か”なんじゃこりゃあ!By松田優作”だと思う・・。-
■難聴という困難を抱えながら、名曲を多数残したベートーベン(古田新太:クスクス)に秘書として取り立てられたシンドラー(山田裕貴)。
彼は、ベートーベンが想像より小っちゃくて小汚いオッサンだった事に驚きつつ、彼の秘書として誠心誠意、業務をこなしていた。
そして、彼の死後、取り交わした会話をメモッたノートを参考に、彼の生前のマアマア酷い身勝手な人柄を、晩年の秘書ホルツ(神尾楓珠)に気付かれぬように改竄し、書物を出版していくのであった。
だが、或る日、アメリカ人音楽ジャーナリスト、セイヤー(染谷将太)がにこやかにやって来て、彼の改竄を怪しんで行くのであった。
◆感想
・今作、この映画サイトの評価を見ると余り芳しくないようであるが、私は大変に面白く鑑賞した。
何より、ベートーベンを演じた古田新太が、面白い。チビで小汚く、金にせこく、ダラシナイベートーベンを見事に演じている。シンドラーを”パパゲーノ”と小馬鹿にして呼んだり・・。あんな、ベートーベンは嫌だなあ。
だが、シンドラー(どう見ても、彼の性的嗜好はドMである。)はそんな彼を敬愛し、その思いは徐々に狂気性を帯びて行くのである。そして、最終的には彼が望んだベートーベン像を三冊の大作に纏めるのである。凄いなあ。
・又、登場人物はドイツ人や、オーストリア人が殆どだと思うのだが、ナント今作では全員、平たい顔の日本人俳優が演じているのも面白いのである。
特に、ベートーベンの友人であるヴェーゲラーを遠藤憲一さんが演じたシーンは、脳内爆笑であった。だって、あんな顔のドイツ人はいないでしょう!(遠藤さん、ホントスイマセン。)
唯一、それらしく見えたのは、ベートーベンの弟でシンドラーに意地悪なヨハンを演じた(というか、意地悪そうな顔で笑うのみ・・。)小澤征悦さん位である。あー、可笑しい。
・シンドラーの天敵であり、真実を知る晩年の秘書ホルツが、彼の捏造に気付くも亡くなり、更に重要人物が次々に亡くなり(正にシンドラーのリスト、逆バージョンである。)、状況はシンドラーのやりたい放題になって行くのだが、そこにじゃじゃーんと現れたアメリカ人音楽ジャーナリストセイヤーは、シンドラーの捏造を疑い、調べて行くのである。ここら辺のせイヤーの脳内一人語りも可笑しいのである。
<今作はベートーベンを敬愛する秘書シンドラーが、真実を知る者が次々に亡くなって行く中で、息を吐くように彼の人生を捏造する様を、ナントキャスト全員日本人俳優で製作したシニカルコメディなのである。
チョイと真面目に考えると、フェイクニュースが氾濫する現代を皮肉っている感じもするが、バカリズムはそこまで考えていたかなあ。只管におちょくっていたんじゃないかな。
それにしても、CDの収録時間が74分だったのはベートーベンの”第九”を収めるためだったとか(実際にはカラヤンが駄々をこねたらしい。)、ベートーベン難聴の話も実は結構聞こえていたらしいとか、諸説があるのも面白いよね。じゃーね。>
ベートーヴェン捏造
勝手に罠にハマった感じ…
最後の生徒のひとことを聞くために長々と交響曲を観させられていたようで…正直途中ウトウトしていたけどそれも踏まえてしてやられた感じが悔しくて面白い映画でした。
山田裕貴と年上の男優との共演は面白い
ベートーヴェンの秘書であり、彼の死後に伝記を著したアントン・シンドラーの半生を描いた、“事実に基づく”コメディ作品でした。
主役のシンドラーを山田裕貴が務め、ベートーヴェンを古田新太が演じたほか、染谷将太、小澤征悦、野間口徹、遠藤憲一といった演技派が勢揃い。彼らの滑稽な演技を観るだけでも十分に楽しめる作品でした。特に古田新太は、天才ベートーヴェンの奇人ぶりをそれらしく演じており、大きくデフォルメされているにもかかわらず、不思議とリアリティを感じさせるところはさすがでした。
物語の構成にも工夫があり、入れ子構造になっている点が興味深かったです。冒頭は現代日本の中学校のシーンから始まり、山田裕貴演じる音楽教師が男子生徒にベートーヴェンに関する知識を披露する展開。その語りを通じて、19世紀前半のベートーヴェンやシンドラーらが登場する仕掛けでした。この中学校の場面は原作小説にはなく、映画オリジナルの要素だそうですが、とても効果的だったと思います。特に、シンドラーが憑依したかのような音楽教師に対し、男子生徒が冷静にツッコむ場面は非常に面白く、最後も落語のようなオチで締めくくられており、バカリズム脚本ならではの巧みさが光っていました。
俳優陣については、7月に観た『木の上の軍隊』に引き続き、山田裕貴が年上男優と共演する格好でした。前作では堤真一との共演で良い味を出していましたが、今作では古田新太との掛け合いで再び魅力を発揮。どうやら年上の実力派俳優との共演で、より持ち味が引き出されるようです。10月公開予定の佐藤二朗との共演作『爆弾』にも期待が高まります。
また、外国の歴史物語を日本人キャストでコメディタッチに描いた作品という点では、『新解釈・三國志』が思い出されました。ジャンルはまったく異なりますが、三国志もベートーヴェンも日本で人気のある題材という点で共通しています。両作を比べると、『新解釈・三國志』がややベタな笑いに寄っていて胃もたれしたのに対し、本作はよりスマートな仕上がりで、満足度の高い作品でした。
そんな訳で、本作の評価は★3.6とします。
低予算ながら上手く纏め仕上げたと感じます
大昔、”アマデウス”を観たけども。この手の話はあれ以来でしょうか。
今日は、低予算ながら良くこんな面倒くさく難解な古典的イメ-ジになりがちな作品の「ベートーヴェン捏造」を見ました。
原作:かげはら史帆氏(ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく)
脚本:バカリズム氏
監督:関和亮氏
-------MC------
・ベートーヴェン役:古田新太さん
・シンドラー(忠実おバカ秘書)役:山田裕貴さん
・セイヤー(アメリカ人音楽ジャ-ナリスト)役:染谷将太さん
・ホルツ(晩年の秘書)役:神尾楓珠さん
・カ-ル(甥)役:前田旺志郎さん
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最初少し難解気味に人物相関が理解できず行くかと思われましたが
洋画で字幕だったら難しくなったでしょうけども、
そこは日本語 ある意味吹替(笑)。かつ登場人物が総て日本人顔。逆にこれで良いのかとは思いましたね。
会話や思ってる心内の心情理解は良く訳されてて分かりました。
この点はバカリズムさんの脚本の功績なのでしょうか。
決して過去作品風な おバカ路線には入らず、
あくまで原作ベ-ス?に忠実路線に徹したところは良かったと感じます。
”アマデウス”の時も感じたのですが、天才を描く時
どうしても内面をどう感じ どの様に切り出すのか表現が難しいと思うのです。
コミカル風に置き換える事でより人間らしく内面を描けたのではないでしょうか。
そういった点が評価かなと感じます。
洋画字幕で内容ベタで描かれてたら、BGMがクラシックですしね きっと熟睡してるだろうと思いました。
原作知りませんが、内容は非常に興味沸きました。
本気でドイツ、ウィ-ン、アメリカ合作で仕上げたら
中々?オスカ-狙えそうな作品素質では無いかと、そう思います。
(良かった点)
・あくまで学校の音楽教室内での 音楽の先生と生徒の話。
ココでの遣り取りが 決して総てを包み隠さずさらけ出す事(真実)が正しいわけでは無いとしているポイントが良い。セイヤ-が最後に取った行動がやはり善の行いとして取れるのではと思うのです。
確かに捏造したことはイケない事ですが、偉大なる音楽家を守り称えたかった訳で。親族内の事まで今更暴露する事がいいのかどうか。そう言う事ではないでしょうか。昨今のSNS問題を思うとそう感じます。
・誰を見てもクセ凄な役者陣。西洋の話なのに、キャスト全員日本人。
でも背景等はできる限り洋風仕立てで。
色々と画を工夫し普通なら金かかりそうな場面を低予算内で纏めているのが伺えます。その点は出来る事をやっているのがこちらにもその努力が伝わって来ます。
上手く纏めていったのかなとは感じました。
・俳優陣はメイン山田さんの頑張りどころ一筋って感じですかね。
あと、古田さんに染谷さんですね。悪乗りして無くて程々で良かったです。
(難点な点)
・脚本域の事ですが、時代を語るのに 18OO年~とか事前テロップ多過ぎと感じます。ちょっと技が感じられません。正確に描きたくてそうなったカモですが、荒くなっても良いと思います。観客はそんな数年毎の話は気にしてないと思います。
あくまで流れが大事で。それよりも その年代の時代象徴する背景的な物を同時に映した方がより一層印象を与えて分かりやすかったのではと思います。
ベ-ト-ベン楽曲がBGMでガンガン流れて
是非好きな人は
どうぞ劇場へお越し下さい!
交響曲第5番の冒頭の意味は「運命はこのように戸を叩く」でいいんです(笑)
この映画を見ている最中に「アマデウス」を思い出しました。「アマデウス」はもちろんいろいろな資料をもとにして描かれたフィクションですが、正直言えばモーツァルトがどんな奇人変人であっても、その「仕事」が素晴らしければ評価は全く変わらないということです。この「ベートーヴェン捏造」も主人公であるシンドラーは名プロデューサーであり、彼の捏造したベートーヴェン像もどこまでが本当でどこからが嘘かなど、ベートーヴェンの仕事の内容から言えば正直どうでもいい話なんです。
モーツァルトやベートーヴェンの「仕事」と比べるのはちょっと変かもしれませんが、昨今の日本の芸能界では彼らのなしえた「仕事」の評価よりも、そのプライベートな問題で干されたり、作品がお蔵入りになったりします。日本の芸能界やマスコミはスポンサーがあってこそのもので、そのスポンサーが最も恐れる我々消費者のクレーム等による不買運動等がある限り、芸能や文学などの「作品」はいろんな足枷があるままです。
もちろん法に触れる犯罪者は糾弾されて然るべきですが、モーツァルトやベートーヴェンがどんな奇人変人であっても、その「仕事」を評価すればいいわけで、彼らの人となりは「そんなの関係ねぇ」わけです。日本だけではなく世界中の現在の芸術がその作品だけで評価できる風になればいいですね。
評価できない。
しいて言えば
ベートベン以外は、おとしめられた。
そんな感じ。
劇中に出てくる、オーケストラは
ちょっとだけなのに感動した。
素直に音楽の力はすごいと思ったし
文化を好きになった。
言葉にすれば
すべておとしめられる
そんな重さがあった。
僕はのだめが好き。
飛んだら跳ねたりする女の子が
昔の偉人と対峙しながら
音楽を作っていく方が、豊かな音楽と思ってる
だから、子供にそんな重たいバトン
渡さないでと書いておく。
生徒のツッコミが鋭い
難聴ながら数々の名曲を作った天才音楽家ベートーベン。しかし、彼のイメージは秘書のシンドラーが捏造したもので、実際のベートーベンは下品で小汚いおじさんだった。ベートーベンを熱烈に敬愛するシンドラーは、彼の死後、そのイメージを聖なる天才音楽家へと仕立てようとした。そんなシンドラーの行動は周囲に嘘つきと言われ、真のベートーベンを知っていた人たちから批判を浴びた。さらに、シンドラーの嘘に気づいたアメリカ人ジャーナリストのセイヤーが、真実を追及しようと長年の研究を行い・・・さてどうなる、という話。
嘘を知りたい人が居るのだろうか?
シンドラーの行動は、大好きな推しを応援する人たちと一緒で、悪いことは認めないという誤った行動としか思えない。
別に小汚い癇癪持ちのオッサンが素晴らしい音楽を作っても良いじゃないか、と思うだけ。
セイヤー役の染谷将太が理路整然とシンドラー役の山田裕貴に迫ったシーンは良かったが、それ以外特に良かった所を見いだせなかった。
せっかく、Mrs. GREEN APPLEのキーボード藤澤涼架が、天才ピアニストで作曲家のショパン役やってたのに、シンドラーとちらっと挨拶しただけで、全くピアノも弾かずもったいなかった。無駄遣いだろ。
現代のシーンで、音楽教師にベートーヴェンの捏造話を聞かされてた生徒のツッコミが鋭かった。あのシーンは良かった。
耐える時間が長い
予告編からは、かつてのTVドラマ『のだめカンタービレ』のシュトレーゼマン=竹中直人や、映画『テルマエ・ロマエ』の阿部寛を思い出した。
ベートーヴェン役をはじめ、オールキャスト日本人ということが、ギャグかコメディだと思わせておきながら。
音楽教師(山田裕貴)が語る、「ベートーヴェンの伝記を捏造した事件」のあらましを、聞いている中学生の脳内でドラマ化した想像の世界という体に、なるほどと思う。
黒田が捏造犯のシンドラー、担任の先生(染谷将太)がシンドラーの嘘を暴くアメリカ人ジャーナリストのセイヤー、他の当時の音楽関係者も全て中学生の知人や、彼が知っている芸能人が割当てられているという形。
そういった試みは決して悪くはないのですが、それとは別に、中盤まで壮絶な眠気との戦いを強いられました。
先生の説明セリフを、キャラが説明セリフとして淡々と語る会話劇が続く展開がつらかった。
音楽家ベートーヴェンをいかに自分が崇拝しているかを語る、狂信者シンドラーの自分語りが大半。
甥っ子を自死未遂を起こすほど精神的に追い詰めたとか、ベートーヴェンの人間性の酷さエピソードが、延々と。
半ば過ぎにベートーヴェンが死んでから、やっと動きが出てきて眠気が軽くなった。
作品や仕事の偉大さに対して、日常生活では癇癪持ちでだらしないダメなおっさんだったベートーヴェン。
その生活実態や、しでかしたスキャンダルの数々を隠蔽し、美化されたエピソードや勝手な心情を捏造して、嘘を嘘で隠していくうち、シンドラーは次第に嘘をつくことに良心の呵責を感じなくなっていき、どんどん取り返しのつかない嘘の肥大を起こす。
それを読んだベートーヴェンの弟子や友人達による、情報戦というか、泥試合がスタート。
終盤、セイヤーが現れてからが、やっとこの映画の本番で、面白くなっていった。
SNSなどで顕著な、「情報の真偽より、ちょっといい話に騙される」とか、「人は自分の信じたいものだけを信じる」とか、受け取る側の姿勢の問題を否定的に揶揄する意図が透けて見えました。
さらには、「そうやって陰謀論的な捏造された過去話を拡散する人間が、元の話を捻じ曲げ、捏造してるんじゃないのか?」という疑念まで提示していた。
極めて現代的なテーマに感じました。
中学生の最後の嫌味なセリフに、本作の全てが集約されていて、面白かったですよ。
そこに至るまでが、怠(だる)いけど。
大事なことなので二度も三度も書くが、面白くなるまで耐える時間が長かった。
映画館で観るほどではない(個人の感想)
最近、鑑賞者の読解力を試されているような(自分にとっては)
難解な作品を観て疲れていたから何も考えずに観ていられる
作品に出合えてほっとした。
とは言うものの、この映画のどこがどう面白いのかは結局
分からなかった。
「九龍ジェネリックロマンス」「遠い山なみの光」「8番出口」は
現実なのか夢や幻覚の類なのか分からないところがあって、
観る人によってさまざまな解釈ができる。そこが奥深くて良い
という人もいる。残念ながら頭が弱い自分は混乱するばかりで
解釈する醍醐味は味わえなかった。
それらの作品と比べると今作ははるかに分かりやすい。というか
最初から最後まで・何から何まで言葉で説明している。行間を読む
余地は全くないと言って良いだろう。
ほぼ全編にわたりベートーヴェンの秘書シンドラーの独白が話を
進める。話術が面白ければそれでも良かったのかもしれない。
しかし彼の話を聞いても「ああ、そうだったの」と思うだけで
特別面白いとは感じなかった。これは受け手の感性の問題か?
ツボにはまって面白かったという人がいるかもしれないが、
自分は楽しめなかった。
バカリズムが脚本を書いた「地獄の花園」(2021年製作)が、
期待しないで観たら意外と面白かった。そして今作は同じ脚本家・
監督による作品ということで期待したが今回は期待外れだった。
笑える映画かと思って観に行ったのに笑えなかった。
あ、中学生の最後の一言だけ笑えた。もしかしたらその一言の
ためにいろんな話を詰め込んだのかとも思えた。
ベートーヴェン以外にもクラシック音楽に馴染みのある人なら誰でも
知っているような音楽家が多数登場する。数名の主役クラスと、多数の
個性的な役者さんたちが出演しているのでどの役者さんが誰の役を
やっているのだろう?という楽しみ方もあるのだろうか。少なくとも
自分はたくさんの音楽家たちが登場してもそれで映画が盛り上がった
とは感じていない。
最近よく名前を聞く山田裕貴が中学校の音楽教師と想像上のシンドラー
を演じた。ピアノを弾く場面があったが手元は映さなかった。
役者さんの中には役作りのために特訓して実際に弾いてしまう人も
いるけれど練習する時間がなかっただろうし、そこまで求めるような
映画ではなかったので良しとしよう。今後に期待したい役者さんだ。
個人的に遠藤憲一は居るだけで何か面白いことが起きそうで好き。
「地獄の花園」と同様に独特の雰囲気を出していた。あと、自分の
勘違いでなければ「8番出口」の”歩く男”役の人(河内大和)が
出演していた。これからこの役者さんはどんどん売れていきそう。
面白さの基準は人それぞれだが、自分と同じ感性の人には劇場での
鑑賞をお勧めしない。映画館で観るほどではないと思った。
人間性が失なわれた英雄譚の完成秘話
虚構と推し活のあいだで
歴史というものは、事実の積み重ねではなく、物語の積み上げである。そう思わせてくれる作品。ベートーヴェンを“孤高の天才”として後世に伝えた秘書アントン・シンドラーの「熱量」を題材にしている。だが、ここに描かれるのは単なる音楽史の豆知識ではない。もっと人間臭い、普遍的な物語だ。
◼️偶像化された“推し”
シンドラーはベートーヴェンを守ろうとしたのか、それとも利用したのか。答えは両方だろう。会話帳を改ざんし、伝記を脚色し、欠点を削ぎ落とした「理想のベートーヴェン」を組み立てた。それは、現代で言えばオタクが「推し」の黒歴史を隠し、SNSで完璧な偶像を作り上げる行為に近い。
「推し活」とは自己投影の営みである。推しを美化することで、自分もまた社会に対して存在を誇示できる。シンドラーにとってベートーヴェンは音楽の巨匠であると同時に、自分の人生を正当化するための最大の道具だった。
◼️日本人が日本人として外国人を演じる意味
特筆すべきは演出だ。古田新太が演じるベートーヴェン、山田裕貴のシンドラーをはじめ、登場人物は「日本人っぽさ」を隠そうとしない。つまり、映画は最初から“これは虚構だ”と開き直っている。
この潔さが効いている。観客はリアリティを疑う余地もなく、「歴史とは誰かのフィルターを通じて伝わる」というテーマに直撃される。舞台演劇的な虚構性が、そのまま映画のメタ構造を補強しているのだ。
◼️先生と生徒、そして観客
さらに構成が面白い。先生と生徒の対話パートで“史実”が語られ、再現パートで“虚構”が提示される。観客は理性と感情を行き来しながら、真実と物語の境界に揺さぶられる。
ラストの会話で「先生のような人が歴史を事実と異なる形で伝える」と生徒が指摘する。これはまさに観客への問いかけだ。歴史を“事実”として信じていいのか、それとも“物語”として受け止めるべきなのか。
◼️歴史はそもそも捏造である
吟遊詩人や琵琶法師が英雄を語った時代から、歴史は常に物語化されてきた。ナポレオンも、信長も、そしてベートーヴェンも同じだ。事実の断片を繋ぎ合わせ、社会が欲する形で脚色する。それを「捏造」と呼ぶか「物語」と呼ぶかは立場次第だ。
シンドラーの行為が暴かれたことで、ベートーヴェンは“神格化された天才”から“欠点も俗っぽさもある人間臭い天才”へと再評価された。むしろ、その方が私たちにとってリアルだし、魅力的ですらある。
◼️結語
『ベートーヴェン捏造』は、歴史をどう受け止めるかという人類普遍のテーマを、笑いと狂気とミステリーで見せる意欲作だ。そして観客は気づく。私たちの「推し」も、企業も、国家も、すべてはシンドラーのような“語り手”によって形作られた偶像なのだと。
結局、歴史とは「推し活」の最も壮大なバージョンにすぎないのかもしれない。
推しの偶像化
楽しんだ、ただバカリズムはやっぱりちょっと苦手
バカリズムはネタも脚本もあまり好みではないのですが、古田新太ベートーヴェンに抗えず鑑賞。
キャストで見る映画でした。山田裕貴さんは実は目元も声もややぼやっとしているので(ディスるわけではないです)、こういうちょっとずれた垢抜けない役のほうが合うのではないかと思いました。古田新太はザ・古田新太です。小澤征悦さんはセリフほとんどないけどいい。
原作未読ですが、音楽の先生が生徒に捏造を語り、その学校の先生役のみなさんが本編の各役としても出てくる仕掛けは、日本人が外国人役をとってつけたような背景で演じる、この作品への導入としていいアイデアだと思いました。
狂気のファンはその狂気の愛ゆえに、対象を誰しもに特別と思わせるだけでなく、自身を対象にとって特別な存在とも思いたがる。それを感じさせるストーリー。それをわかっていても不思議とシンドラーを応援する気持ちになってくるのは山田さんの力かもしれません。
総じて楽しめた作品です。
ただ、終盤の生徒とのやりとり。
本編ではシンドラーの先生が、セイヤーへの解釈が想像であることを指摘され「その方がドラマチックじゃないか」というシーンは本編とのつながり、表裏、人間の普遍性を表してとてもいいのに、それを受けた生徒の一言が私的にはやりすぎかな。
そこはわかったような顔でふっと笑うくらいの方が好みでした。それでも十分生意気な中学生です。すでに「先生の妄想ですよね」と言ってるんだから。
なのにわざわざ「先生みたいな人が真実を歪めてきたんでしょうね」(うろ覚え)とまで無自覚風にはっきり言わせちゃうのは、わかりやすくしたというより、これを面白いと思うバカリズム的性質なんだろうなぁと思います。なんというか、意地の悪さ。それもからっとしたタイプならいいんだけど、陰湿なやつ。それがバカリズム的毒といわれればそうなんですが、私はやっぱり少し苦手なのかもしれません。
歴史の核心 に触れた作品は少ないから 制作意義は大きい。
古田新太さんが ベートーヴェン って期待してしまうがな キャラ的に❗️
バカリズムさんは基本ハズレは無いから もっと期待してしまうがな。❗️
山田裕貴さん お馴染みすぎて安定感。
でも本作の最大の 重要度は 最後の子役のセリフが全て
推測するに
①歴史というのは科学 多くの書物を交差させて書物を科学的に検証
【立花隆著『天皇と東大』に詳しい たいていの公立図書館には置いてあります】
②しかし 本作見ればわかるように 書物は恣意的に作られるし 特に時の為政者側の書物は都合のいい書き振りだと思う
ベートーヴェンはよくわからないクラシック苦手の俺でも
ナーンにも無い時代 単なる 発言メモ が 図書館なんだね 聴力の関係もあって
というのが ノンフィクションの原作 あるだけに勉強になりました。
フルCG的 フルVFX的なのは 普通に破綻なかった。
シンドラー って
『シンドラーのリスト』 シンドラーエレベーター🛗 についで 人生三度目のシンドラー
古田新太さんの演技が面白い🤣かどうかは 各人の感性によるので 是非スクリーンで確認して❗️
あくまで個人的には 小手伸也さんのズラ姿 が笑いのツボにハマりそうだったのに
あんまり出番も少なく 弾けてなかったのが残念。
顔ぶれ見ても どう考えても 小手伸也さんに弾けて欲しかった。
有料パンフ🈶は 確認的に必要じゃ無いかなぁ 知識の小袋 パンフかもな よく読んでなくてすまん。🙇
この映画が楽しいのか違うのか それはスクリーンで観た人間にしかわかりません。3連休 コレにておしまい。
理由はお金がない💴から・・・時間はあるんだけどね。どうしても🈶有料パンフ買わないと気が済まない俺でした。
天才+天才=凡庸
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