ベートーヴェン捏造のレビュー・感想・評価
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なるほど
気軽に楽しめる歴史ミステリーの良作
予告で引っかかっていた、なんで日本人キャストで近世ヨーロッパの音楽家たちの物語をやるんだ……という部分は、物語冒頭でうまく処理され、気持ちよく映画空間に入っていけました。
タイトル通り、現在残っているベートーヴェンのイメージがどのように捏造されたのか? を解き明かす作品ですが、若干のコミカルさはありつつも、歴史ミステリーとして楽しめるような描き方がなされています。
現代パートを付けたことが本作の素晴らしいところですが、もう少しこの部分のボリュームを増やせば、「捏造」というテーマに沿ったバカリズムさんらしいシニカルさがさらに強調されたんじゃないかな、という気がしています。
あと、残念だったのは美術面。
説明用に出てくるCGがやや安っぽく、欧州の街並みを再現するはずのLED背景もあまり馴染んでおらず、不自然なルックになってしまったのは残念です。
このあたりを追求する映画じゃないのは理解してますが。
さて、捏造はどっちだろうか?w
面白い。
笑うという意味ではなく興味深いの方だ。
さすがはバカリズム脚本、ひねくれた視点が大好物だ。
今作は熱狂的な崇拝者による印象操作の話だ。
彼が思う英雄を未来永劫に英雄たらしめんとする為の行為である。その対象がベートーヴェン。
完全無欠な天才音楽家を彼は捏造した。
古田氏演じるベートーヴェンは、台詞にもあったけど小汚いオヤジであり、品格とか漂ってるわけもなくナイスなキャスティングと思われる。
それを後世に語り継がれる天才としてプロモーションしたのが秘書のシンドラーである。
事実は書き換えられるのだ。
「勝者が歴史を作る」なんて言葉もある。
事実や真実は、記録者や執筆者の思想や価値観に左右されるものなのだ。
バカリズム氏は歴史そのものに「??」を突きつけた。
それってどこまで本当なの?
人物像くらいなら可愛いもんだ。歴史そのものを改竄しようとする連中もいる。
声高にしつこく主張しつづければ、何百年後かには歪められた歴史が正史に変わる事もあるだろう。
いや、既にすげ変わっている事例もあるかもしれない。
こんなテーマを内包してるものだから、表層はコメディっぽく話は進んでいくのだが、サイコスリラーみたいな深層が不意に顔を出したりする。
語られるものを盲目的に信じる事の危うさみたいなものでもあるし、常識こそ疑えって側面もある。
誰かの価値観を排除して形成や伝達されるものなど、人の世界には存在せず、99.9%の人類は聖人君子なわけないのである。
そういう着眼点が面白かった。
「歴史は浪漫」
この一言はこれらの事を前向きに捉えた言葉であるのかもしれない。
真実でも虚構でも
おふざけ映画と思いきや
古田新太がベートーベン⁈なんじゃ、そりゃ⁈
と、さほど期待せずに観たが、意外とよかった。
まず、日本人役者がヨーロッパの再現ドラマをやってることを不自然に感じさせない構成が上手。
主人公は明らかにヤバい奴なのに、観ていると応援したくなってしまう、人物描写の塩梅も上手い。
そして、真実とは何か?真実を明らかにすること=正しいことなのか?という、なかなかに深いメッセージも込められている。
ラストに少年がサラッと口にするセリフが、すごく深い。
しいて言えば、主人公が捏造した内容がもう少し具体的だと、さらによかったかも。
とはいえ、十分に面白い映画でした。
運命
ベートーヴェンの生涯を捏造した秘書シンドラーを描くという面白い題材に、バカリズム脚本が重なるとどうなるんだろうと気になり鑑賞。
評価は割れているようでしたが、自分はめちゃくちゃ楽しめました。
シンドラーの異常とも言える尽くしっぷりは現代でいう推しへの眼差しだなと思いましたし、そんな推しを身近で崇められるなんてファンからしたら感謝感激もんだなと思いましたし、理想の推しを作っていこうとする狂気までな行動もよくみるやつだからか、伝記物に近い作りでも身近な目線で観れるのは良いなと思いました。
全体的にシンドラーの心の声と共に進行していくのですが、バカリズム脚本らしくテンポ良いボケとノリツッコミが入っており、ベートーヴェンとの最初の接触で面白いくらい悪口を言ったかと思えば、手のひらクルックルでベートーヴェンの秘書になってみたり、仕事がから回っていながらも、ベートーヴェンに尽くせる悦びに浸って無意識に暴走してしまったりとでシンドラーの大変な一面を短い時間でこれでもかってくらい味わえました。
今作はベートーヴェンの死後から話が広がっていき、ベートーヴェンのヤバい本性を知っている側の人間の暴露本を出そうとするのをシンドラーが封じようとベートーヴェンの幼馴染や弟子と協力する流れになりつつも、シンドラーが他のことに根回ししていたら裏をかかれたりとでドッタンバッタンする流れがコメディになっていて面白かったです。
最初は会話本をベースにベートーヴェンの伝記を書き出していっていたのですが、だんだんと本性がバレていきそうになる中で捏造に捏造を重ねていくという事になるのですが、コメディ要素はかなり薄れ、シリアスな内容になっていきつつも、問題なくストーリーは進行しますし、捏造を分析した上で怪しむ人物も出てきたりと様々な角度からシンドラーを疑り深く観ていくってのも良いですし、怯まず捏造や改竄を続けるシンドラーも中々の大物だなと思いました。
現実パートともしっかりリンクしており、シンドラーの行為は長いことバレなかった事が、現代のSNS社会とも繋がっていたりとするのが面白かったです。
キャストはカツラを被り、衣装も貴族の格好というだけでめちゃめちゃ日本人で、そこに音楽家たちの名前をつけたというコント的な配役ではあるんですが、違和感なく飲み込めますし、横文字が飛び交ってもそういう世界観だなとサクッと飛び込める作りで良きでした。
これは原作も買ってじっくり読み込みたいですね。
楽しくスリル満載の作品でした。
鑑賞日 9/16
鑑賞時間 15:50〜17:55
驚いたことに、とても良かった…
正直言ってあまり印象の良くない監督&脚本家のコンビだったので期待せず観たのだが……とても良かった!
音楽と役者の良さもあるが、筋運びも枠もイイ感じ。
ウンチクもユーモアも行き過ぎず適度に抑えられていて楽しめたし、日本人が西洋人を演じることに違和感がないどころか、却って伝わりやすくなっていた。
客席はガラガラでしたが、エンドロールの音楽が終わった時には思わず拍手しそうになりました。
…先入観で観る観ないを決めてはいけないな、と。
伝記に盛りが多いのは、ベートーヴェンに限らないかと。
好きな人は良いほうに盛りたくなるし、嫌いな人は穿った見方をしてしまうのが人間だし、公平に書こうと距離を置いたら、話がつまらなくなるのは必然。
結局、真実なんてのは、人それぞれの主観の中に存在するものなんだと思う。
そういえば、音楽はまさに主観だろうし、真実でもある気がする…
「真実はいつもひとつ!」は間違いでした。(by江戸川コナン)
上映開始早々なぜか高校(中学?)のホームルームのシーン。「あれ?スクリーン間違っちゃった?」と、一瞬不安になるけど、音楽室に向かう生徒と古田新太がすれ違うシーンで間違っていないことに気付く。タイトルが出るまでのアバンでは音楽教師と男子生徒のやり取りが続きます。
で、場面は200年前にポンっと飛んで、ベートーヴェン登場。ここで音楽室の肖像画で見る他の作曲家とは一線を画すオーラを放つイケおじとは180度違う小汚いジジイであることに納得してしまいました。
中学生の頃から疑問に思っていたのですが、水道が行き渡り糞尿も肥料として利用していた江戸時代の日本と違って、衛生観念の欠如した19世紀のヨーロッパでは、桶に溜めた糞尿を窓から投げ捨てるのは当たり前で、落ちている大便を深く踏み込まないようにハイヒールが発明されたとか、入浴の習慣がないとか、不衛生を絵に描いたような世界観が存在していたんです。
本当はベートーヴェン以外の人物も汚らしくて良かったと思うんですが、本作はベートーヴェンのイメージ崩壊が主目的なのでこのギャップは仕方がないですね。
中ほどのベートーヴェンの死の前後の説明パートは、正直なところちょっと飽きてきたというか眠気を誘いました。「地獄の花園」とか「ウエディング・ハイ」で細かい笑いを取っていたバカリズムの脚本力はどこに行ったのか心配になるくらいでした。
ラストに近付くところで染谷将太が山田裕貴の捏造に気付いて追い詰めていくところは圧巻というか、近年になってようやく解明された会話メモの矛盾をもってしても、一度人々の心に刻み込まれてしまったベートーヴェン像というものは、真実をもってしても動かしようがないほど固定されてしまっている現実を思い知らされた作品でした。
なぜ映画にしたのでしょう?
誤解される勇気が欠けている
バカリズムさん脚本の単発テレビドラマを見た時に私が感じたのは、「誤解をおそれる余り、説明過剰になっている。つまり視聴者(観客)を信用していない。」ということだった。
馬場康夫監督(「私をスキーに連れてって」など)は、そのYoutubeチャンネルで最近の映画は暗黙の了解(演出)が無くなっていることを指摘している。昔なら言わずもがなの演出になった場面でもわざわざセリフなどで説明されるようになっているという。
倍速再生が前提となった現代では、じっくりと間合いを楽しむという場合では無いということか。
時代が変われば人の常識も思考も変わるのは当然ではあり、映像表現としての映画の演出も変わって行くのは仕方ないとはいえ、昭和から映画を観てきた者としては一抹の寂しさもある。
分からないものを分からないものとして受け止め、時間をかけて咀嚼していくという勇気は必要だと、昭和のおっさんは思う。一度ですべてを理解できるほど世界は単純ではない。
さて、本作での日本人が欧米人を演じるというアクロバティックな演出にはとりあえず目をつぶろう。
それにしても主人公の心情・行動がこと細やかにセリフで説明されるが、やはりバカリズムさんは誤解されたくないのだろうか。芸術として大衆に提供するということは良い意味でも悪い意味でも誤解の渦に投げ込むことだろう。たとえ誤解であってもそのことが作品のダイナミズムを産んでいくものだ。過去の名作が制作者の意図通りに理解されたとはとても言えまい。
バカリズムさんには、誤解される勇気を持って欲しいと思う。
最後の、染谷将太さんと山田裕貴さんの対峙シーンは割と良かった。
あれくらいの緊張感が全体にあると良かったのだが。
amazonが共同制作とあるので、年末の第九が流れる頃にAmazon Primeで配信されるのかもしれない。見るべきかどうか迷っている向きは、年末まで待つという手もあるだろう。
松竹の宣伝がダメ
YouTubeで映像を観た際にコメディ映画だと思い込みました。バカリズム脚本でもありますし。
しかし内容は学校の音楽教師と生徒の部分を除けば「かげはら史帆 」さんの3刷された原作にほぼ忠実。
特に後半は。
松竹は「大怪獣のあとしまつ」てもコメディなのかなんなのか不明な宣伝と扱いでしたから、またもや同様の宣伝の仕方てすね。
映画の内容はクラシックに興味のある者なら既知の内容、エピソードですが、とても興味深い内容です。
ウィーンやベルリンの街並みやホール等がCG(LED)なのも良いかと。
芝居の書き割りと思えば違和感はありません。
何より上映中、ベートーヴェンの美しい音楽に浸れるのも素晴らしいかと。
但し評価は分かれる作品。
有料なのだからそれで良いと思います。
結構マジメに作ってんぢゃーーーん。(^_^;
めずらしくド直球
バカリズムの脚本という事で軽妙な会話劇を期待すると肩透かしを食らう。ほぼひねりのないナレーションで展開する話は、とても分かりやすいが退屈。
予告もミスリードで、おかしいのは偏屈親父のベートーベンでなく、彼を狂信する秘書のシンドラーです。
ただし最後の方のシンドラーと音楽ジャーナリストの問答は、山田裕貴の名演もあって熱がある。対話のあとのシンドラーの姿には、偉大な伝説を捏造によって守り切ったという達成感に凄みがあった。
その後現代に戻っての先生と生徒の会話は、シンドラーの捏造は、その方が「面白い」、それによって「利益がある」と思われて守られた、という軽いものにされてしまう。去り際に生徒は、先生から些細な秘密を守ってねと言われ、「言いませんよ、利がないから」と笑っている。
物事の本質は関係ない、面白いか、何か利益があるか、というノリで動いているネット社会を穿つ話、というのは深読みすぎるかな。
生徒は先生に何か思う所があれば、いかようにでも脚色して先生の些細な秘密を広めるだろう。
「デスノート」を、山田裕貴をライトにしてリメイクしたらけっこうイケるのではと思いました。
バランスの取れたエンタメ
テーマの焦点のあて方もさることながら、日本人がサラリと外国人を演じること、当初出ていた現代の登場人物が別役で次々と登場すること、有名どころがどんどん出てくるところ、わかりやすい丁寧なストーリー展開。
様々な挑戦と面白みがバランスよく詰め込まれていると感じました。
良い音質で良い音楽も聴けるし。
意図的に捏造するかしないかに関わらず、過去の話なんていうのは、個々人の感情や損得勘定によって、真実なんていかようにも変化させられる。
捏造だと明らかにされてしまったという事は、ある程度彼が純粋な人であったとも取れる。
彼が純粋にベートーヴェンを崇拝してそのような行為に至ったのか、己の損得勘定でそうしたのか、その真実も結局だれも(彼自身も)わからないままである。
前後の学校のシーンは必ず必要な設定で、中学生の少年が言うからこそのセリフが印象的でした。
ベートーヴェン×バカリズム=最高!
全221件中、61~80件目を表示
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