「さて、捏造はどっちだろうか?w」ベートーヴェン捏造 辻さんの映画レビュー(感想・評価)
さて、捏造はどっちだろうか?w
面白い。
笑うという意味ではなく興味深いの方だ。
さすがはバカリズム脚本、ひねくれた視点が大好物だ。
今作は熱狂的な崇拝者による印象操作の話だ。
彼が思う英雄を未来永劫に英雄たらしめんとする為の行為である。その対象がベートーヴェン。
完全無欠な天才音楽家を彼は捏造した。
古田氏演じるベートーヴェンは、台詞にもあったけど小汚いオヤジであり、品格とか漂ってるわけもなくナイスなキャスティングと思われる。
それを後世に語り継がれる天才としてプロモーションしたのが秘書のシンドラーである。
事実は書き換えられるのだ。
「勝者が歴史を作る」なんて言葉もある。
事実や真実は、記録者や執筆者の思想や価値観に左右されるものなのだ。
バカリズム氏は歴史そのものに「??」を突きつけた。
それってどこまで本当なの?
人物像くらいなら可愛いもんだ。歴史そのものを改竄しようとする連中もいる。
声高にしつこく主張しつづければ、何百年後かには歪められた歴史が正史に変わる事もあるだろう。
いや、既にすげ変わっている事例もあるかもしれない。
こんなテーマを内包してるものだから、表層はコメディっぽく話は進んでいくのだが、サイコスリラーみたいな深層が不意に顔を出したりする。
語られるものを盲目的に信じる事の危うさみたいなものでもあるし、常識こそ疑えって側面もある。
誰かの価値観を排除して形成や伝達されるものなど、人の世界には存在せず、99.9%の人類は聖人君子なわけないのである。
そういう着眼点が面白かった。
「歴史は浪漫」
この一言はこれらの事を前向きに捉えた言葉であるのかもしれない。
共感ありがとうございます!
シンドラー自身も脚色・改竄しまくったベートーヴェンの伝記を出版したところで大した利益にならないのは解っていたはずなのに、生涯を通してベートーヴェンを賛辞し続けた動機がちょっと薄かった気がします。
現代のSNSのインフルエンサーも似たような形で持ち上げられているわけで、そういう社会構造へのアンチテーゼをバカリズムなりにシニカルに表現した作品だと思いました。
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