「ラスト10分で「やるじゃん」とニヤリ。」ベートーヴェン捏造 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
ラスト10分で「やるじゃん」とニヤリ。
原作は、もともと論文だったのをふくらませて
アントン・フェリックス・シンドラーの伝記に仕立てたもの。
世界に名だたる「ベートーヴェン伝」著者シンドラーによる改竄は、1977年の驚愕の発表以降、ようよう明らかになってきたが、その動機は不明、
という状況に切り込んだ作品。
原作はめっちゃ面白いんだけれど、
どう映像化するのかと思ったら、
ほぼ「映像劇伴つき朗読劇」といった趣だった。
――ラストの直前までは。
* * *
じつは映画が始まった途端、
「あれ? スクリーン間違えたか?」と思った。
だって、いきなり映ったのは、現代日本の中学校。
同じ時間帯で、学園ドラマの映画とか上映してたっけ?
そしたら、舞台は音楽室へ。
山田裕貴さん演じる音楽の先生が、
ベートーヴェンのピアノソナタ8番「悲愴」の第2楽章を弾いている。
ああよかった。間違えてなかった。と安堵。
そして先生は、柊木陽太(ひいらぎひなた)さん演じる中学生に、
ベートーヴェンの「会話帳」を改竄してその人間像を「捏造」したシンドラーの物語を始める……。
そういう入り方だからか、
19世紀ドイツが舞台なのにキャストが全員日本人で台詞が日本語でも、
すぐ慣れた。
そして、シンドラーの自分語りのナレーションが多いので、
ほぼ朗読劇。
なお、
日本語が今風なのは、原作の著者が敢えてそうしているから。
* * *
原作に忠実でよろしい、と
最後の20分を残したあたりまでは思っていた。
だがしかし。
あれ? なんか、急に展開が派手になってません?
あちゃ~、ドラマチックにしようと思って、やっちゃったやつか~、残念、
といったん株を下げた
と思いきや、
最後の10分で、
おお~、そう来たか!
それも計算のうちか!
と、V字爆上げ。
やるじゃん、とニヤリ。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。