おーい、応為のレビュー・感想・評価
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「良し悪し」ではなく「好き嫌い」で感じる大森立嗣監督作品
大森立嗣監督作品に対する印象について思い起こすと、いわゆる“大森立嗣印(じるし)”と表現できるような独自な世界観があって、感想を聞かれた場合の回答は「良し悪し」という基準より「好き嫌い」の方が合っているような気がします。敢えて言えば、面倒なことに作品毎に好きか嫌いかは「観てみないと判らない」という点。「どっちに出るか?」と期待と不安が半々に公開初日のTOHOシネマズ日比谷へ行ってまいりました。
今作は1820年から始まる江戸時代後期が舞台の時代劇。葛飾北斎/鉄蔵(永瀬正敏)の娘で葛飾応為/お栄(長澤まさみ)が本作の主役です。始まって早々、夫である南沢等明に三下り半を渡して離縁をし、手土産の草餅を片手に北斎の元へ出戻って居候を決め込むお栄。嫁ぎ先を去る際の決定打は「(等明の描く)下手な絵を見ていることに耐えられない」と言うだけのことはあり、元々北斎からの信頼も厚いお栄の絵の才能は本作品中にも実際、“応為の作品”が引用されていてその美しさに納得度が高まります。竹を割ったような性格のわりに、いざ自分のこととなると不器用なお栄は“人付き合い”を煩わしいと感じ、再び筆を取って父に付き“絵の道”に精進する決意をします。
本作が時代劇映画初主演となる長澤まさみさん。流石に独特な台詞回しについてはややおぼつかなさも感じますが、さすがに雰囲気は相当にあって“存在感”と言う意味では堂々と感じます。勿論、お栄と重要に絡んでくる篠井英介さん(元吉)や寺島しのぶさん(こと/お栄の母)など、信頼度の高い共演者の存在も大きいと思います。
また、何と言っても本作におけるお栄/応為のタッグパートナー、父娘であり師弟関係である鉄蔵/北斎を演じる永瀬正敏さんが“裏切らず”どころか“また超えてくる”レベルで凄いです。本作では“(亡くなる)90歳の北斎”までを演じられますが、それぞれの年代を演じ分ける特殊メイクも違和感を感じないほどにおどろおどろしく、その北斎に付き添い続けるお栄の覚悟も自ずと伝わってきます。
そして、演じられる姿は初見でしたが、渓斎英泉/善次郎を演じた髙橋海人さんも「意外」と言っては失礼なのかもしれませんが、かなり頑張っておられたと思います。長澤さんや永瀬さんとの会話シーンにおける“間の取り方”は危なげないばかりかむしろ堂に入っており、聴いていて違和感を全く感じずに気持ちよく耳に入ってきます。今後も機会があれば是非“時代劇”挑戦してもらいたい気がしました。
そして、前述にて“草餅”について触れましたが、全般を通して飲食シーンが多いのも本作の見どころ。蕎麦や飯、あられ、金平糖、羊羹等々、会話シーンでも容赦なく食べ続けています。絵に対する追求は生きることが根本。そのため、北斎自身も描いているとき以外は“食べる”“寝る”が重要であり、そのことも北斎の長寿につながっています。
その他、所々に「クスッ」とするようなユーモアもあって楽しく、歴史観的にも見応え充分。今回の大森作品、私としては「好き」と言う結論で締めくくりたいと思います。
これ長澤まさみじゃなくてもよくないか
歴史に隠れた名絵師
男前な長澤まさみと、絵師に憑依した永瀬正敏
着流し・へこ帯・裸足の長澤まさみ・・・匂い立つ色気
葛飾北斎の娘・葛飾応為は究極のファザコン、だったのではなかったの
でしょうか?
晩年・中風のため身体の不自由な北斎から、自分の死後、どうする?と
案じられて、
【どうもしねえーよー】と、ベラんめー口調で答える。
しかし応為は同時に、江戸へ帰ったら北斎から離れて
「好きに生きろ‼️」とも諭される。
その時の応為の態度は予想外に激しい。
非常に腹を立てて、
「ずうっと好きに生きている。一緒に居たいから居るのだ」
と観客の私も面食らうほどの怒りで。
応為は父親・北斎を非常に尊敬していて、仕事のサポートに命懸けで
望んでいるのだと、知る訳です。
言わずもがなですが、永瀬正敏の葛飾北斎がもう絶品です。
紹介によると3万点の作品を描き仕事中毒、
晩年に「猫ひとつちゃんと描けない」とこぼすほど、満足を知らない。
また北斎は引っ越し魔で93回引っ越したと記録にあります。
映画の中でも3回ほど荷車を押して引っ越す様子が描かれる。
正直言って、そんなにストーリーに起伏が無く、笑えるシーン、
泣けるシーンもほとんど無い映画です。
画面も暗く、住まいの長屋は万年床を押しのけて隙間で父親・娘が
寝そべって絵筆を走らせています。
灯りは蝋燭一本。
実際に自然光で撮影したそうです。
しかしながら永瀬正敏と長澤まさみは見応えありましたね。
1820(北斎51歳)から1849年5月10日(北斎90歳)に亡くなるまでの
晩年の北斎と応為が描かれていますが、
1938年頃に小布施(長野県)に制作旅行に行き、帰って来た日の
ボロボロに疲れ果てた姿、
後ろ姿の痩せ衰え両足が曲がってO脚になる様子、晩年のハゲ頭の姿。
特殊メイクも凄くて永瀬正敏さんは見せ場と見所の宝庫でした。
応為に話しを戻せば、作品は数十点とのこと。
でも葛飾応為画集が出版されています。
映画の中でも、吉原に出向いて、格子戸越しに遊女が客に声を掛けたり
三味線を弾いたりする様子を見ているシーンがあります。
「吉原格子先之図」で、
このシーンは浮世絵になっていて、映画の中でも披露されていますが、
色調(暗い赤色をベース)、構図、格子戸の内と外が平面で描かれて、
非常に現代的なイラストのようなポスター画のようです。
応為の才能がひしひしと伝わります。
北斎が「富士越龍図」を描きながら事切れる(死ぬ)シーンは事実か
知らないけれど壮絶な死に様。
筆を指から離すのに至難する応為。
その後、
北斎の葬式を立派にあげた応為は猫のように姿を消したようです。
生没年不詳の女絵師。
葛飾北斎の娘。
ミステリアスな応為を、
長澤まさみが生きているように演じて
とても美しい凛々しい姿でした。
応為の絵に呼応するかのような画面作りに酔いしれて!
男前が過ぎる!
導入直後の歩く姿、キセルを吹かす姿、両手にお椀を持って飯を食う姿、どこから見ても無骨な輩にしか見えない長澤まさみさんに心底驚きました。
ところが鏡を前にして髪を結うシーンで急速に女性らしさが増していきます。
たおやかな雰囲気はないものの、その後も何処か中性的な魅力を放ち続け、葛飾応為という難しい役どころを見事に演じ切っておりました。
やはり、とんでもない女優さんです。
また、それ以上に本作で度肝を抜かれたのが徹底した光の使い方。
殆どのシーンが自然光のみの撮影という凄さ!
外の光に調光を合わせ、役者の顔が影になろうがお構いなし。
無粋な照明で画面全体を満遍なく照らし出すなんて事は一切していません。
まるで劇中に出てきた応為の絵に呼応するかのような光の演出にただただ酔いしれてしまいました。
応為という多くを知られていない絵師の魅力を光の演出で伝えようとする本作。
台詞ではなく映像で応為という絵師に浸れる2時間でした。
娘(応為)が父(北斎)に最後まで従っていたのは父を天才絵師として尊敬していたから。
この映画、長澤まさみ(応為)主演というよりも、長瀬正敏(北斎)とのダブル主演と呼んだ方がよいです。
・応為が嫁ぎ先から出ていって、北斎のもとに戻ったのは、絵師である応為の夫の絵師としてのレベルが低く、父とともにいるほうが心の平安が保てるからです。
・長澤まさみ(応為)は絵が十数点現存している絵師ですが、自由奔放なキャラクターとして描かれています(髪を結ばず長く伸ばす、タバコを吸うなど)。
・この映画では芸術家である北斎親子は、芸道一筋の生き方を通すため世事に疎く、大名家の家来からの仕事の依頼を「都合が悪い」と断ってしまいます。現代の有名アーティストの振る舞いと相通ずるところがあります。
・北斎親子の作業部屋は現代風で言うと「ゴミ屋敷」状態になっており、引っ越しを繰り返していたという描写は「史実どおり」だと思います。
・しかし父北斎(長瀬正敏)の絵師としての天才ぶりがさすがなもので、娘絵師の応為(長澤まさみ)が父のサポート役として最後まで従っていたのは頷けます。
・映画の後半は、旅行脚となり、あちこちで富士山の絵を描いています(いわゆる富嶽三十六景)。
・この映画は、応為という女性絵師の自由奔放な人生を描くとともに、葛飾北斎という江戸時代の一流アーティストの芸術一筋の生き方を描いた佳作であると思います。
ワンちゃんがお利口
2人のガチバトルを観る
荒い画像にノスタルジックな音楽がピタッとハマる。
葛飾北斎と娘のほぼ2人劇と言っても良いかも?
永瀬正敏が凄い。
手のアップで指先が炭で黒ずんでる細かいところまで見事に作り込んでいる。
年齢を重ねて増えていく皺。減っていく白髪。弱っていく足腰。浮き出る肋骨。
芸術家にありがちな汚くて粗暴な様も見事。
これを受けての長澤まさみも頑張っていると。
江戸っ子?宜しく見事な啖呵。
優しさと荒々しさを年齢ごとに演じきってる。
北斎を呼び捨てにする勝気な娘の一面を見せつつ周りに気を向ける優しさも。
最後フィクションでいいからキチンと落として欲しかったかも…
綺麗なままだったのか汚れて落ちぶれて朽ちたのか。
諸説落としはいくない(笑)
淡々と
『淡々と人生を捧げる』という狂気
長澤まさみを眺める映画だと思うけど、ちょっと物語の起伏が無さすぎる気もする
2025.10.17 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(122分、G)
原作は飯島虚心の『葛飾北斎伝』及び杉浦日向子の『野分』『木瓜』
絵師・葛飾北斎の娘・お栄を描いた伝記映画
監督&脚本は大森立嗣
物語の舞台は、1820年のどこかの貧乏長屋(史実では名古屋近辺)
浮世絵師・葛飾北斎(永瀬正敏)の三女・お栄(長澤まさみ)は、絵師の夫と過ごしていたが、彼の絵を貶したことで出戻ることになった
父の家に戻ったお栄は、タバコを蒸しながら何もしない日々を過ごしていて、たまに父の世話をしているくらいだった
父には善次郎(髙橋海人)と初五郎(大谷亮平)と言う弟子がいて、善次郎は遊び人で、初五郎は至って真面目な男だった
お栄は初五郎に恋心を抱いていたが、彼にはそんな気は微塵もなかった
恋に敗れたお栄は、離れて住む母・こと(寺島しのぶ)のもとに行き、病弱の妹・はつ(一華)との時を過ごしていく
はつは生まれながらに体が弱く、盲目の身でもありながら、真っ直ぐに生きていた
だが、彼女は短命に終わり、お栄の心は虚しさだけが募っていった
物語は、北斎の後妻・こととの間に生まれた娘を描いていて、彼女自身はのちに「応為」と呼ばれる絵師に成長していく
映画では、そんな絵師の側面も描かれるのだが、ほとんどは北斎との衝突シーンになっている
彼女にどんな絵の才覚があったのかは「見てください」レベルで、北斎が応為と名付けた理由なども映画内ではほとんどわからない
「おーい」と呼ばれていたとしても、その漢字を当てはめるきっかけとか理由はあるはずで、そう言ったものは説明されていなかったように思えた
映画は、あまり起承転結を感じない作品で、淡々と時間が経っていく印象があった
ほぼ北斎の晩年を描いている伝記映画のようにも思え、永瀬正敏の特殊メイクが見どころのように思える
飴を買ったり、金魚を飼ったり、犬を拾ったりするのだが、それが作品にどのように影響を与えたのかもわからない
ただ、寂しさをずっと感じていたことは確かなようで、北斎は自分がいなくなった後にどうなるのかを心配していた
北斎よりも母ことの方が先に亡くなっているので、そのあたりの懸念をずっと持っていたのではないだろうか
ラストでは、北斎の死後は文献がほとんどなく、どのように死んだのかとかはわからないとされている
パンフレットには北斎と応為の年表があるのだが、応為がいつ生まれたのかも定かではないようだった
ウィキにも生年は載っておらず、彼女が残した作品の年代だけは明記されている
それぐらい謎多き女性と言うことなのだが、長澤まさみを配したところで、もっと男女関係が派手な作品になってしまうのかと思った
「妹だと思っている」と言われて引き下がるようなキャラにも見えないので、もっと暴走させても良かったのかもしれません
いずれにせよ、起承転結的な物語の流れがあんまり感じられない作品で、淡々と時間が流れていくように感じられた
エピソードのほとんどが周りで起きていることばかりで、お栄が起点となっているものが少ないのも起伏の無さのように思う
彼女には絵を見る才能があったし、動きのある面白い絵というものを描いているのだが、それがどのような努力で描かれたのかとか、どのような才能があったのかはほとんどふれられていないのは残念だった
絵画論を展開すれば良いというものではないと思うが、作品を完成させる過程の中で、北斎を唸らせたものの正体をもっと明確にすれば、見方も変わるのかな、と感じた
スローライフ
展開もスローで、ゆっくり時間が流れる。
若干寝れそうだが、でも案外悪くない。
・寛斎の絵にはそんなにフューチャーなし
・娘の絵も発展なし。最後まで焦点当てなかった。
・犬の死、娘の死にも割とあっさり
こんな保管場所もない時代、引越し三昧の生活、そして火事🔥 北斎の絵はどうやってその後に残せたのか疑問
全体的に特に話しのポイントを何に置いた訳でもなく、ふんわりとした、ゆっくり時間が流れていく映画でした。
どこか心地良かった。
時代劇が苦手だけど、今作品はなかなか良い。
全215件中、201~215件目を表示
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