「才能と言う名の希望 ーあるいは災いー」おーい、応為 星のナターシャnovaさんの映画レビュー(感想・評価)
才能と言う名の希望 ーあるいは災いー
応為(おうい)という画号を贈られていますが本名はお栄(おえい)さん
(ウキペディア調べ)
冒頭、お栄さんは嫁いだ先の絵師で夫の絵を「下手くそ!」と罵って大喧嘩!
そのまま家を飛び出してたどり着いた先は貧乏長屋の一室。
何がごみくずで何が必要な物か見分けがつかない様な所で
初老の男が一心不乱に絵を描いている。
男はお栄さんの実の父の天才絵師、葛飾北斎。
北斎はお栄さんに「お前のいる場所など無い」とつれない言葉。
そこには北斎の父としての娘を思う気持ちがこもっている事、
後半で良くわかるのですが、嫁ぎ先を飛び出して来た時には
聞きたくない言葉ですよね。
それでも行くあてのないお栄さんは北斎のそばで不貞寝を決め込む。
お栄さん、これからどうなるのかしら??
女っぽさ等ほとんど無く粗野なお栄さんだけど、
そこは演じる長澤まさみの実力と言うか滲み出るものと言うか、
決して下品ではなく、見ていたくなる微かな色気や恥じらい。
ぜひ映画館で見届けてくださいな。
で、
月に8回ほど映画館で映画を観る中途半端な映画好きとしては
比較的地味な映像が続く本作の中に
史実かどうかは知らないですが柴の子犬を取り入れたのは
時間経過を感じさせるのにとっても有効でした。
ちょっとしたユーモアシーンもあって
柴犬チーム、良い仕事してました(笑)
葛飾応為の作品を数年前の浮世絵展で観たことがあります。
光と闇のコントラストが見事な作品でした。
火事場で燃え上がる炎や蝋燭の灯に魅了されるお栄さんらしい。
映画の中では随所にその描写が織り込まれてましたね。
映画の中盤、寺島しのぶ演じる実の母から
「あんたは親父に似て絵も上手いが目も効くから」
それは、一種の才能であり、才能という名の災い〜
最初の夫の絵を下手くそ!とつい罵ってしまう。
男としては惹かれている大谷亮平演じる初五郎を
嫌いになりたくないから絵を観ないと頑なに拒む。
自分に言い寄ってくる高橋海人演じる善次郎のことも
その絵を多少なりと認めているから必要以上に
自分に入り込ませたくない。
目利きのお栄さんにとっては絵の良し悪しにどうしても引っ張られてしまう。
結局、お栄さんが心底、素晴らしいと思える絵を描けるのは
父である葛飾北斎以外にはいなかったのかもしれない。
そして、男尊女卑の時代にお栄さんの実力を真に認めてくれるのは
父である葛飾北斎以外におらず、北斎のそばにいる事でしか
お栄さんが絵を描き続け、認められる術が無かった〜〜。
悲しい〜〜とばかりも言い切れない。
娘への親心だけでは無く真の実力を認めて「絵師」として
お栄さんに「葛飾応為」と言う画号を与えた北斎。
東洋でも西洋でも名前すら残っていない素晴らしい芸術家は
おそらく山ほどいるのだろうから〜〜。
今年放送中のNHK大河ドラマ「べらぼう」の蔦屋重三郎の全盛期と
お栄さんが実力を発揮し出した頃の年代差、多分10年とか20年程。
もうちょっと早くお栄さんと蔦重が出会えていたら〜
これは歴史好きの妄想ですね〜〜(苦笑)
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