劇場公開日 2025年10月17日

「「北斎の娘」ではなく、キャリアウーマンの先駆けとしての女性像を、もっと掘り下げてもらいたかった」おーい、応為 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 「北斎の娘」ではなく、キャリアウーマンの先駆けとしての女性像を、もっと掘り下げてもらいたかった

2025年10月17日
スマートフォンから投稿

主人公のお栄(応為)が、夫に罵声を浴びせて家を出る冒頭の描写こそ、彼女の気性の激しさが感じられて印象的なのだが、それ以降は、細切れで断片的なエピソードが淡々と綴られるだけで、一向に話が転がり出さない。
失恋したことを契機として、お栄が絵筆を取るようになっても、絵師としての彼女の活躍に焦点が当たる訳ではなく、火事を美しいものとして捉える感性や、盲目の妹や愛犬の死といった出来事が、お栄の画風にどのように影響したのかが分かるような描写もない。
確かに、お互いに似た者同士で、だからこそ、相手を思いやりながらも、ぶっきらぼうでつっけんどんにしか接することができない、北斎とお栄の不器用な親子関係はよく描かれていると思う。
だが、その一方で、同じ絵師として、師弟であり、ライバルでもあったはずの2人の関係性が、ほとんど認識できなかったことは物足りないし、偉大な父親と比べられるという宿命を受け入れ、絵師という道を選んだお栄の覚悟や、そこから生まれる葛藤のようなものがまったくと言って良いほど描かれなかったことも、残念としか言いようがない。
あるいは、再婚もせず、己の絵の才能だけで身を立てて行くお栄は、キャリアウーマンの先駆けとも言える存在なのだが、その割には、現代の「働く女性」を応援するようなメッセージが感じ取れなかったところも、せっかくの題材を活かしきれていないように思わざるを得なかった。
長澤まさみが、お栄のキャラクターにハマっていただけに、「北斎の娘」としてのお栄だけでなく、1人の独立した芸術家としてのお栄の生き様を、もっと掘り下げてもらいたかったと思えるのである。

tomato
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。