「長澤まさみを眺める映画だと思うけど、ちょっと物語の起伏が無さすぎる気もする」おーい、応為 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
長澤まさみを眺める映画だと思うけど、ちょっと物語の起伏が無さすぎる気もする
2025.10.17 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(122分、G)
原作は飯島虚心の『葛飾北斎伝』及び杉浦日向子の『野分』『木瓜』
絵師・葛飾北斎の娘・お栄を描いた伝記映画
監督&脚本は大森立嗣
物語の舞台は、1820年のどこかの貧乏長屋(史実では名古屋近辺)
浮世絵師・葛飾北斎(永瀬正敏)の三女・お栄(長澤まさみ)は、絵師の夫と過ごしていたが、彼の絵を貶したことで出戻ることになった
父の家に戻ったお栄は、タバコを蒸しながら何もしない日々を過ごしていて、たまに父の世話をしているくらいだった
父には善次郎(髙橋海人)と初五郎(大谷亮平)と言う弟子がいて、善次郎は遊び人で、初五郎は至って真面目な男だった
お栄は初五郎に恋心を抱いていたが、彼にはそんな気は微塵もなかった
恋に敗れたお栄は、離れて住む母・こと(寺島しのぶ)のもとに行き、病弱の妹・はつ(一華)との時を過ごしていく
はつは生まれながらに体が弱く、盲目の身でもありながら、真っ直ぐに生きていた
だが、彼女は短命に終わり、お栄の心は虚しさだけが募っていった
物語は、北斎の後妻・こととの間に生まれた娘を描いていて、彼女自身はのちに「応為」と呼ばれる絵師に成長していく
映画では、そんな絵師の側面も描かれるのだが、ほとんどは北斎との衝突シーンになっている
彼女にどんな絵の才覚があったのかは「見てください」レベルで、北斎が応為と名付けた理由なども映画内ではほとんどわからない
「おーい」と呼ばれていたとしても、その漢字を当てはめるきっかけとか理由はあるはずで、そう言ったものは説明されていなかったように思えた
映画は、あまり起承転結を感じない作品で、淡々と時間が経っていく印象があった
ほぼ北斎の晩年を描いている伝記映画のようにも思え、永瀬正敏の特殊メイクが見どころのように思える
飴を買ったり、金魚を飼ったり、犬を拾ったりするのだが、それが作品にどのように影響を与えたのかもわからない
ただ、寂しさをずっと感じていたことは確かなようで、北斎は自分がいなくなった後にどうなるのかを心配していた
北斎よりも母ことの方が先に亡くなっているので、そのあたりの懸念をずっと持っていたのではないだろうか
ラストでは、北斎の死後は文献がほとんどなく、どのように死んだのかとかはわからないとされている
パンフレットには北斎と応為の年表があるのだが、応為がいつ生まれたのかも定かではないようだった
ウィキにも生年は載っておらず、彼女が残した作品の年代だけは明記されている
それぐらい謎多き女性と言うことなのだが、長澤まさみを配したところで、もっと男女関係が派手な作品になってしまうのかと思った
「妹だと思っている」と言われて引き下がるようなキャラにも見えないので、もっと暴走させても良かったのかもしれません
いずれにせよ、起承転結的な物語の流れがあんまり感じられない作品で、淡々と時間が流れていくように感じられた
エピソードのほとんどが周りで起きていることばかりで、お栄が起点となっているものが少ないのも起伏の無さのように思う
彼女には絵を見る才能があったし、動きのある面白い絵というものを描いているのだが、それがどのような努力で描かれたのかとか、どのような才能があったのかはほとんどふれられていないのは残念だった
絵画論を展開すれば良いというものではないと思うが、作品を完成させる過程の中で、北斎を唸らせたものの正体をもっと明確にすれば、見方も変わるのかな、と感じた
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