「歌と欲と暴力の物語」罪人たち HGPomeraさんの映画レビュー(感想・評価)
歌と欲と暴力の物語
序盤、ダレてしまいました。
鑑賞前の想像では、まずは「フロム・ダスク・ティル・ドーン」のようなパニックアクションを妄想していました。
事実、物語の導入から恐怖感を植え付ける演出が有ったので、予想通りのパニックやグロさを覚悟して鑑賞したところ……小一時間でダレてしまいました。
導入のサミーの緊張感ある映像から、その本題到達までが……長過ぎた。
前半小一時間の前置き物語も長過ぎました。
それでも、物語の根幹に深く繋がりがあるのかなと、想像して観続けた結果、あの小一時間の前置きは、相当量カットしてもいいのではと思いました。
くどいようですが、導入の「見せ方」からして、多くの人がパニックとアクションを想像せざるを得なかったと思うのですが、小一時間の起句が、普通のロードムービーのような、ある意味安定した緩やかな語りだった。
それ自体は別にいいのだが、本作をパンパイアとのアクションを想像していた限りでは、あの小一時間の導入は、個人的に受け入れられなかった。
途中バンパイアが進攻してくる映像を入れていたため、「戦いはいつ始まるの?」と、ウズウズしてしまった人も少なくないのでは。
結局、本格的なバトルは、なんと終盤の15分程。
これには、ド肝も抜かれた。
この映画は、アクションではなくロードムービーの様な、音楽と人種問題と酒と女の映画に少しホラー要素を盛り込んだ作品でした。
映画のタイトル「罪人たち」には当てはまる描写は多く有った。
主人公の兄弟自体、当時のシカゴから下ってきた有名な悪党だし、青少年の不倫、セックス、酒、暴力、差別、音楽(これも罪として描いていると感じた)、その巣窟に襲いかかる悪の象徴。
KKKとの確執やネタ明かしや争いに関しては、もう、何がなんだかの目線で勢いで見るしかなかった。
バンパイアとの争いとは直接関係ないし、物語の本筋と捉えるには、あまりに中途半端な存在感だった。
この映画、おそらく欲との攻防、差別問題、人間愛、それを紡ぐ音楽(ブルース)を見せたかったのだろうと考察する。
バンパイアは取り入れなくても良かったのでは。
そもそもバンパイアの設定や見せ方自体が中途半端で留まっているし、明らかにアクションやホラー要素は二の次になっている。
途中で度々退散するバンパイアとか、何で家に入れないのかと、また誰でもいいから入室を許可しただけで何で入れるのかとか、何でサミー(音楽)がバンパイアにとって重要な要素なのか、説明がまったくなかった。
バンパイアとの最後の戦いの幕開けも、何とも無理矢理感(中国人女性の我慢が出来ないがための発声。限界を超えた緊張感が伝わらなかった。)が否めなかった。
ラストはあっちこっちに飛んで何とか結末を納めたが、正直、首を傾げる物語でした。映像の見せ方も中途半端と言わざるを得ない。
評価する点は、音楽やブルースの映像は良かった。
マイケル・B・ジョーダンさんの最後の黄昏も悪くはない。
サミーじい様のくだりや、サミー青年のギターソロのくだりも、それだけ切り取って観れば、悪くはない。
各演出や見せ方を個別に切り取って観れば悪くはないのだが、それでは1つの物語として成立しない。
いかんせん物語の結合性が、あまりに無理矢理だった。
バンパイア無しで、ブルースと差別をテーマにしたヒューマンドラマで良かったと思う。
バンパイアの存在に、大きな意味が有ったとしたら、申し訳ないが自分には理解できなかった。
妙なミュージカル性やパラレル性を取り込んだり、制作者は色々と、複雑な全てを表現したい気持ちが強すぎたのかもしれない。
見る人が見ると、また違った見方ができるのかもしれない。
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