ストレンジ・ダーリンのレビュー・感想・評価
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巧妙な時間軸操作が驚きと味わいをもたらす
この映画は我々になかなか核心を掴ませない。それこそ序盤の思わせぶりな映像やスリラー然とした語り口に警戒心は高まる一方で、さらに追い討ちをかけるようなタランティーノ的な時間軸のずらし。これをやって成功する例などごく一握りであることを我々は経験則で知っている。が、中盤になって何かがバチンと弾けると、全ての辻褄が噛み合って本作にのめり込むように、本当にあっけなく白旗を上げて心酔してしまう自分がいた。「ネタバレ厳禁」な映画なのでこれ以上踏み込めないが、本作を織りなす6章が時間軸を解体されてもなお「追って/追われ」「支配し/支配され」のサバイバル構造を維持し続けているのは本能的に堪能できるポイント。加えて「悪魔を見る」という不可思議な視覚ビジョンも痛烈で、ラストで誰が誰の中に悪魔を見るのかという部分は、当事者の心理を解明する上で重要な部分と言える。独特の風味ゆえ好き嫌いはあるだろうが、見て損はない。
私にはダークすぎる展開
シンプルなスリラーを斬新な構成で再構築
全6章の物語を第3章からシャッフルして構成するパズルのような斬新な構成のシリアルキラースリラー。
連続殺人事件が全米を震撼させる中、とあるモーテルの前で止まる車の中で出会ったばかりと思われる男(カイル・ガルナー)と女(ウィラ・フィッツジェラルド)は一夜を共に過ごすのか駆け引きをしている。女はあなたはシリアルキラーなのかと尋ねる・・というのが第1章の始まりだが、章の上映順はシャッフルされているので第1章がどこで出てくるかはお楽しみ。全編通してこの男女の追走劇なのだが、ストーリーについてはこれ以上は書けない。
第3章で始まる映画はなぜか全身赤い服を着て耳から血を流す女が男に終始追われている。シリアルキラーに執拗に追い込まれる展開はシンプルかつ定番のスリラー映画だ。
この映画の面白さはシンプルな追走劇の順序をシャッフルした斬新な構成にある。登場人物は少ないが各章の人物は魅力的。
第3章の謎は徐々に明かされていくのだが、キーになるのは「思い込みの危険さ」か。男だから、女だから、そうしたジェンダーによる思い込みに警笛を鳴らしているところもこの映画の深さになっている。
35ミリフィルムによる往年のスリラー映画のルックスといいJT・モルナー監督は巧妙に映画をコントロールしている。またアメリカからスリラー映画の巧者が登場した。次回作も楽しみだ。
なかなか面白い
ムード先行で、非線形の語り口もイマイチ
「実録もの」を謳った作品。「オレゴン州で終幕を迎えた連続殺人事件を、警官や目撃者の証言をもとに映画化」という触れ込みだ。なるほどシリアルキラーの温床みたいなオレゴンの片田舎が舞台か、と偏見まるだしの妄想を膨らませる。
映画は冒頭、赤い医療用スクラブを着た白人女性が野原を走ってくるさまをスローモーションで捉える。彼女の左耳はちぎれ、歪んだ口元は大きく腫れあがっている。医療従事者? 誰から逃げてる? そんな映像にかぶせて「Love Hurts」「Strange Darling」といったナンバーが聞こえてくる。Z・バーグのけだるい歌声はどこか『ツイン・ピークス』を思わせ、ヤバい雰囲気がムンムン立ちこめる——
…と、ここまでのつかみは上々だったが、この先はいささか期待外れだった。
のっけから映画は、『パルプ・フィクション』のように非線形の語り口でいくとタイトル・カードで示す。本作は全6章からなり、只今からご覧いただくシークエンスは「第〇章」ですよとご丁寧に明かしてみせるのだ(※ちなみにタランティーノつながりで言うと、ナイフで犠牲者の胸に「EL」と刻みつけるのは、額に鉤十字を彫り刻む『イングロリアス・バスターズ』を思い出させる)。
その章立ての第3章からいきなり始まるという時点で、はやくも観客は何かワケがあるぞと勘ぐらずにはいられない。
なんでも本作の編集を巡っては、監督と制作会社のミラマックスの間で相当揉めたらしい。このため、観客にわかり易く「第〇章」と明示することで両者は手を打ったのか、などと憶測したり…。
ともあれ、逃げる女は、道中拾った酒瓶を気付け薬代わりにラッパ飲みした後、患部を荒々しくアルコール消毒。次いでタバコを深々と吸って気を落ち着かせる。紫煙で居場所が知れることも恐れない、肝の据わった振舞いから、カンが鋭い人ならすべてが読み取れてしまうのではないか。
そもそも本作のストーリーは、第1章から順になぞっていくと想像の範疇を超えるようなものではなく、登場キャラの掘り下げも足りないように思える。イカレた人間たちが織りなす複数の物語を解体/再構成してみせた『パルプ・フィクション』のような、ストーリーテリングの妙はここにはない。
シリアルキラーが「悪魔が見える」とつぶやいたり、ゲイリー・ギルモア(実在した連続殺人犯)への共感を口にしたりと、“それっぽいムード”の醸成を図ろうとはするのだが、観客は「どのタイミングで相手に襲いかかるか」と身構えているので、話の中身がサッパリ頭に入ってこない。なんなら、間延びしたセリフだなと思いながらスクリーンを注視することになる。
それでも、隠し持った銃を抜こうとしてできないラストショットなどには、1970年代の“遅れてきた西部劇”のような余情が漂い、なかなか悪くなかった。
そのほか本作で印象に残ったのは、いかにも健康に悪そうな食事を作っている終末論者夫婦の妻を演じていたバーバラ・ハーシー。『ライトスタッフ』『ハンナとその姉妹』『ある貴婦人の肖像』ほかで一世を風靡した彼女の健在をはからずも確認できて、何はさておきウレシイ。
また観終わった後に、『プライベート・ライアン』や『パブリック・エネミーズ』などの名脇役ジョバンニ・リビシが本作で撮影監督デビューを果たしたと知り、少々びっくり。しかし35ミリフィルム撮影のありがたみはさほど感じられなかった。
章の構成以外に魅力がない
70年代風ルック、Z Bergの音楽
シリアルキラーを扱ったスリラー映画。時系列が交錯する全6章から成ることも説明されるが、予告でも見た銃撃を交えた逃走劇の第3章から映画が始まるのだけれど、次第にその理由が判明していくので、鑑賞前のネタバレには要注意な作品です。
主人公の女性を演じるウィラ・フィッツジェラルドは、アマプラのドラマ「ジャック・リーチャーS1」で女性警官を演じ、個人的に気になっていた女優さんだったことも鑑賞理由のひとつ。だけれど、本作では結構印象が異なるので、事前に情報を得ていなかったら気付かなかったかも…
最初に「35mmフィルムで撮影」したことが説明されるが、色彩がきれいで、スマホや主人公と敵対する男のトラックなどがなければ、なんか70年代風のルック、特に”知らない悪魔より、知っている悪魔の方がましだ”と唄う「Better the Devil」が気に入ったZ Bergの音楽、主人公の演技がよかった。
トラックを降りて射撃していたら、かなり離されるんじゃないとか、終盤のアレとか??な箇所もあるが、なんか癖になる映画でした。
監督の小粋さを感じる秀作
パンフォーカス
庭には二羽以上鶏がいる
本国では昨年の夏に公開された作品で、その評判を基に各媒体の紹介文や宣伝文が書かれているのだが、映画紹介サイトのイントロダクション含め、読まずに観た方が良いタイプの作品だと感じた。
ネタバレを踏まなくとも、『シリアルキラー』『男女の出会いが予測不能な展開へ』『6章構成の時系列シャッフル』とまで言われれば、何パターンかは展開の予想がついてしまう。
本編の冒頭でも丁寧に『シリアルキラー』『6章構成』と説明されるのだが、個人的にはそれすら不要だと思った。驚きを作っているのは時系列シャッフルだけであり、ミステリー要素は殆どないので、シャッフルを説明されずにあれこれと観察と考察をしながら観た方が楽しめたように思う。
本国のスタジオではシャッフルすら不評だったらしく、時系列順に編集し直されそうになったらしい。配信時代のスリラーにトリッキーな要素は不要ということなのだろうか。
ストーリー以外では、くどいくらいに赤を使う色彩や、アメリカあるあるがシュールなほどたっぷり詰め込まれたキャラクター造形も面白い。アメリカンニューシネマや懐かしのスリラー作品を感じさせる作風は、刺さる人には深く刺さりそうである。
自分にとっては宣伝文句がスポイラーになってしまい、残念だった。あまりに隠すと宣伝にならないので難しいところだが。面白そうな作品を探して観に行くというよりも、ザッピングしてたまたま観始めるくらいの緩ーい出会いが一番楽しめそうな作品だった。
(~ヘ~;) ウーン....やられたわ。〓■●゛
構成が巧みで怖い
基本ホラーもスリラーも苦手なのだがなぜか観に行ってしまい後悔している。
面白くないわけではない。構成も巧みでむしろ面白い。でも怖い!!!!!
詳しいことはネタバレになってしまうので言えない。
とにかく、時系列がバラバラの6章の作りとなっており、最初から怖い。次の章になったら少しは息がつけるのかと思ったらそれも怖い。
私の心臓はピンチでした助けて。
章が開かれるたびに「そういうことなの?!」となるわけだが、だからと言って安心できない。ずっと怖いよ!
挿入歌が歌詞もハマってると思ったらやはりオリジナル曲のようですね。
詳細までは覚えてないけどどこかで耳にしただけで悪夢をみそうである。
普通の猟奇スリラーになりそうなところを構成の巧みさで新たなページを作り出した。
面白かった。でも二度と観たくない。
巧妙な傑作!!
サイコキラー?
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