「まんまと」ストレンジ・ダーリン toshijpさんの映画レビュー(感想・評価)
まんまと
予告編を見たり紹介文を読んだりしたら、ほぼすべての人はあの男
(“デーモン”)がシリアルキラーだと思うはず。そんなミスリードを
巧みに取り入れた宣伝戦略と映画の構成が面白さを増幅させた。
全6章構成、そしてその各章を順不同にして見せる展開も見事。
自分もまんまとその戦略に弄ばれた。途中で「あれ?この女
(“レディ”)、意外と癖ありだな」から「悪意がありそう」となり
最後は「こいつがシリアルキラーかよ!?」となった。
出だしはシリアルキラーの男に追われるか弱い女に見えるから
「なんとか逃げ切れるといいな」と思うのだが途中で見え方が
逆転する。
女の正体が分かってからは「早く逮捕しないと被害が拡大する。
どうやって逮捕に至るのか?」という関心になる。(冒頭の字幕で
シリアルキラーの終焉を予告していたから何らかの形で連続殺人に
終止符が打たれるのは分かる)
“レディ”は躊躇なく人が殺せる上に狡猾さもあって手強い。逮捕され
るかも知れない状況から脱出する様は「羊たちの沈黙」(The Silence
of the Lambs)(1991年製作)のハンニバル・レクターを彷彿させる。
脚本が巧い。登場人物は少ないがそれぞれが適材適所。そして
殺される人間は単なる間抜けではなくてちゃんと思慮分別がある。
特に“デーモン”からの連絡で駆け付ける同僚の警察官。長年の経験
から感じる勘を働かせ、とりあえず現場をその状態にして応援を
待とうと判断する。それが正解だったにもかかわらず・・・
そこからの展開もわざとらしさがなくて良い。
二転三転の後、最後は誰が女を止めたのか。警察官ではない一般市民
だったが隙のない女性で良かった。彼女も勘が働いたのだろう。
自分が撃たれる前に正当防衛の一発を放った。
そこから長回しになるラストシーンも印象的。
“レディ”役のウィラ・フィッツジェラルドの変幻自在の演技が見もの。
ミア・ゴスの強力なライバルが現れた感じ。
全編フィルム撮影されたという映像にも独自性を感じた。何となく
70年代に製作された映画のように感じるカメラワークや演出があった。
物語は関係ないがカーチェイスや暴力の場面に「マッドマックス」
(Mad Max)(1979年製作)の雰囲気を感じたりもした(個人の感想)
