「何も知らずに観た方が良いけれど、先読みするタイプの人には不向きかもしれません」ストレンジ・ダーリン Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
何も知らずに観た方が良いけれど、先読みするタイプの人には不向きかもしれません
2025.7.24 字幕 T・JOY京都
2023年のアメリカ映画(97分、PG12)
時系列シャッフルで構成された、ある女と男を描いたクライムミステリー
監督&脚本はJ・T・モルナー
原題の『Strange Darling』は、直訳すると「奇妙な恋人」という意味
物語は、ある殺人事件を資料を基に映画化したというナレーション(ジェイソン・パトリック)が挿入されて始まる
オレゴン州を中心として起きた殺人事件を取り扱っていて、プロローグにてある男(カイル・ガイナー)がある女(ウィラ・フィッツジェラルド)の首を絞めている様子が描かれていく
映画は全6章+エピローグの構成で、「第3章 Can You Help Me? Pkease?(助けてください)」「第5章 Here, Kitty, Kitty.(ここかい? 小猫ちゃん)」「第1章 Mister Snuffle(ミスタ・スナッフル)」「第4章 The Mountain People(山の人々)」「第2章 Do You Like To Party?(パーティーはお好き?)「第6章 Who's Gray Gilmore?(ゲイリー・ギルモアって誰?」という流れで描かれていく
映画の狙いとして、シャッフルすることによってミステリーに見せかけていて、それがないとただのイカれた人物の話でしかない
なので、ネタバレを喰らう前に観にいった方が良い作品で、本当ならば「時系列シャッフル」すら知らない方が良いと思う
映画は、ひと組の男と女が中心に描かれ、その行く先々でハプニングが起こっていく
巻き込まれた人は可哀想としか思えず、唯一生き残った人物が「一番タチが悪い」と言うのも様式美のように思える
そんなサバイバル的な要素をどのように楽しむか、と言うところが肝要で、先を呼んでわかったふうで観るのでは楽しめないと思う
冒頭から一貫しているミステリーは、男と女の関係性なのだが、むしろ一番肝心な部分はぼやかしたまま終わる
それは、二人がどうしてあのホテルに来たのかと言う部分で、捜査の一環だったのが、偶然の出会いなのかはわからない
ちなみに、ラストの第6章の章題は「ゲイリー・ギルモアって誰?」と言うもので、これは女が取り上げた名前だった
彼はアメリカにおける「死刑制度」の流れを変えた犯罪者であり、弁護士を通じて「自らが死刑を要求し執行された男」だった
女はゲイリー・ギルモアのように生きたいと言うふうに語っていたので、それは自らを止めるものは「死」のみであり、それを執行してくれる者を望んでいたと言うことになる
だが、彼女の生存本能の高さから生き存え、彼女がか弱く見える白人女性と言うだけで先入観が邪魔をしていく
そんな彼女を救うことになる二人の女性と、仕留めることになる女性の間に何があるのかと言えば、直感で動けるかどうかと言うところなのかもしれない
いずれにせよ、あまり小難しく考える映画ではなく、観たままを楽しむのが良いと思う
死にかける寸前に回避する能力の高さと、他人を初見で自分の世界に引き込む秀逸な演技は見もので、それをきちんと表現しているところも良い
彼女の下着が上下別々と言うのもおそらくは意図的なもので、少しばかりのだらしなさと言うものを男に見せているのだろう
このあたりの設定や演出に関しては様々な見解があると思うので、英字レビューをザッピングしたら良いのではないだろうか
