「巧妙な時間軸操作が驚きと味わいをもたらす」ストレンジ・ダーリン 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
巧妙な時間軸操作が驚きと味わいをもたらす
この映画は我々になかなか核心を掴ませない。それこそ序盤の思わせぶりな映像やスリラー然とした語り口に警戒心は高まる一方で、さらに追い討ちをかけるようなタランティーノ的な時間軸のずらし。これをやって成功する例などごく一握りであることを我々は経験則で知っている。が、中盤になって何かがバチンと弾けると、全ての辻褄が噛み合って本作にのめり込むように、本当にあっけなく白旗を上げて心酔してしまう自分がいた。「ネタバレ厳禁」な映画なのでこれ以上踏み込めないが、本作を織りなす6章が時間軸を解体されてもなお「追って/追われ」「支配し/支配され」のサバイバル構造を維持し続けているのは本能的に堪能できるポイント。加えて「悪魔を見る」という不可思議な視覚ビジョンも痛烈で、ラストで誰が誰の中に悪魔を見るのかという部分は、当事者の心理を解明する上で重要な部分と言える。独特の風味ゆえ好き嫌いはあるだろうが、見て損はない。
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