「血みどろの物語、カラフルな画面」ストレンジ・ダーリン 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
血みどろの物語、カラフルな画面
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一夜限りの関係を持った男女がシリアルキラーvs被害者の立場になって血みどろの攻防戦に突入していく。でも、このプロットには罠があって、6章に分かれた物語が順不同にシャッフルされているところがミソだ。しかも、意図的に。
以上がネタバレぎりぎりで、観客を見事にミスリードしていく監督&脚本のJ.T.モルナーの手腕に唸ってしまった。美しいのにどこか不気味で、赤を基調にカラフルなカラーパレットを見せてくれる撮影監督のジョバンニ・リビシ(製作も兼任)のセンスも、また然り。本作は、過去のシリアルキラー映画を一旦裏返して、観客の先入観をも裏切る痛快な1作。単なる犯罪映画やスプラッタムービーの枠を超えて、今現在、常識とされていることの胡散臭さにも言及していることろが奥深いと感じた。ハリウッド映画は時々こういう作品を送り出してきて、アイディアの枯渇を免れているのだと、つくづく思う。
ヒロインのレディを演じるウィラ・フィッツジェラルドの振れ幅が広い熱演も凄いが、対するデイモン役のカイル・ガルナーの"受けの演技"がこれまた絶妙で、2人のバランスが変化していくプロセスにも、この映画の愉しみがある。平日の午後、東京、有楽町の劇場には噂を聞きつけてやってきたと思しきシネフィルが数名、息を殺してシートに身を沈めていた。
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