「水掛け論と言って逃げる初(はじめ)」見はらし世代 ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
水掛け論と言って逃げる初(はじめ)
冒頭から不穏。
道路を渡ろうとする母・由美子(井川遥)、いきなり車にはねられて亡くなるんじゃないか
と思うほど怖いシーンだった。いずれ由美子が亡くなるとの示唆なのだろうかと思った。
家族で別荘?で過ごす家族だが、父・初(遠藤憲一)は仕事を優先させる。
あれこれ由美子に言い訳し、すでに心ここに在らず的な雰囲気はクソ親。
ここでの由美子のせつなく儚げな雰囲気が素晴らしかった。さすが井川遥である。
10年後の主人公・蓮(黒崎煌代)は胡蝶蘭の配送をやっていて、
父が日本に帰ってきていることを知り、それを姉・恵美(木竜麻生)を知らせるも、
姉は全く興味なし。
それでも姉の引っ越しにかこつけて、10年半前に家族で食事をとった場所で、
再び父・娘・息子で会うことにするのだが、ここでファンタジーへ突入。
カフェのライトが落ち、そこから曖昧な感じに。
カフェのライトが落ちる示唆は、蓮の乗るハイエースのカーテレビで2度ほどあり。
なるほど、そこがファンタジーへの入り口になるとの示唆だったのかと感心した。
食事しているところに亡くなった母・由美子が現れたのには驚いた。
そして母が見えているのは父・初のみ。
会話の最後に「仕事をしている貴方が好きだった」という言葉に
嗚咽する初、やはり後悔していたのだろう。泣く父を不思議そうに見る蓮。
この反応から母が見えていないことがわかる。
姉と父の彼女(菊池亜希子)が昔行った別荘へ。
このふたりはフィットネスで知り合っているのだが、不思議な再会をしている。
そして姉も、10年半前に母と過ごした時間に後悔を滲ませる。
という、それぞれが母と家族について思いを馳せる。
けど、時間は戻らない。後悔が滲む。それを踏まえて前を向いていくのだろうか。
黒崎煌代は特に表情や声の演技が素晴らしかったし、
吉岡睦男との絡みが最高に笑えた。
あと、独特の間と画の構図が段塚唯我監督らしさなのだろう。
次回作を楽しみに待ちたい。
