「子ども時代のトラウマに向き合う」MELT メルト minavoさんの映画レビュー(感想・評価)
子ども時代のトラウマに向き合う
子ども相手のレイプシーンがトラウマ級の胸糞と聞いて、かなり身構えて行きましたが、全然違ってしっかりしたドラマが展開されます。
公式は「ラース・フォン・トリアー×ミヒャエル・ハネケ×ヨルゴス・ランティモス!」と煽ってますが、トリアー、ハネケの狂気とも、ランティモスの抽象とも異なり、ひとりの少女に起こった不幸をしっかり描く内容となっています。
安易に胸糞とか鬱とかカテゴライズされるものじゃなく子どもの残酷さや性暴力の悲惨さ、大人の身勝手さなどのメッセージが伝わる良作でした。
物語は、社会でも人間関係でも何か不器用でうまくやれない女性が、同窓会に誘われたことをきっかけに13歳の頃の思い出を回想することで展開されます。
近年もA24の「エイスグレード」「mid90s」、最近の邦画だと「ルノワール」など青春一歩手前の中学生くらいの年代を主役にした映画がありますが、だいたいが大人びる様子を親世代の目線で描く路線が多いかと思います。本作は子どもが持つ残酷さをストレートに描くアプローチ。古くは「十五少年漂流記」に対する「蝿の王」というか。
そして、子どもの残酷さを大人たちがフォローできず見逃された時、最終的に子どもが追い詰められる様もキチンと描かれます。
また、主人公女性は子どもの頃のトラウマに対して、きっちりカタをつけに立ち向かいます。そこもある種の痛快さがありました。
映画でも、セックスを簡単に扱うのがカッコいいみたいに描く風潮が多い中、本作は、性被害とその影響について逃げずに真正面から描いている。そのことに意義を感じました。
重たいテーマですが、是非スクリーンでご覧ください。
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