本作はユニークな構成ゆえに観る者の評価が、
大きく分かれる作品と言えるだろう。
物語は「エヴァの章」と「マヘの章」と・・・
いう3つのパートに分かれ、
それぞれ異なる雰囲気とアプローチで展開される。
どの章をより魅力的に感じるか、
あるいは全章を多角的に楽しめるかによって、
本作の評価は大きく変動するはずだ。
【エヴァの章】
どこか既視感を覚える設定ながらも、
そのキャラクター造形が際立っている。
主人公のエヴァは、穏やかでユーモアのセンスを持ち合わせつつ、
論理的な思考と細やかな観察眼で物事を分析していくベテラン刑事だ。
些細な言動も見逃さず、
時にはスマホをスピーカーにして客観性を保つ演出など、
その捜査スタイルは緻密さを極めている。
劇中のセリフ「事件の原因はいざこざ?心を読み解くだけ」
にもあるように、
彼女は単なる事件解決に留まらず、
人間の心理の奥底に迫っていく。
この綿密なキャラクター造形は、
アガサ・クリスティの、
ミス・マープルのような、
洞察力に優れた名探偵を彷彿とさせる。
実話ベースの事件の展開自体は、
往年のテレビドラマを思わせるような構成だ。
この章では、物語の謎解きそのものよりも、
「男たちをだませても私はだませない」と豪語する主人公エヴァの、
その言動や人間味豊かな側面を楽しむことに重きが置かれていると言える。
対照的な【マヘの章】
ストレスを抱えたマヘが快楽を求める。
より感情的で刹那的な刺激を追求したシークエンスが展開される。
この章は、エヴァの章が持つ古典的なミステリー要素とは異なり、
観る者の感情を揺さぶるような、
よりスリリングで予期せぬ展開が特徴だ。
この二つの章の対比こそが、本作の魅力であり、
同時に評価の分かれ目となるだろう。
エヴァの章で知的なミステリーを堪能した後に、
マヘの章で感情の起伏に富んだ展開を体験することで、
一本の映画の中に多様なジャンルが凝縮されているかのような印象を受ける。
論理的な思考と、感情的な衝動という、
人間の二面性を描いているとも解釈できるだろう・・・
そして
【もう一章】
そしてもうひとり、
そこからじゃ届かないだろ、
ガラスを突き破らない男・・・