劇場公開日 2025年12月12日

「アリ・アスター監督が抱くネットやSNSへの不信感作品」エディントンへようこそ くまねこさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 アリ・アスター監督が抱くネットやSNSへの不信感作品

2025年12月13日
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鑑賞方法:映画館

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「エディントンへようこそ」大好きなアリ・アスター監督作をTOHO日本橋で公開2日目に鑑賞。

今作はホラー映画というよりはクライムスリラーに近いテイストのブラックコメディー。コロナ禍における冷静かつアイロニカルな監督の視点が重層的におりなす作品。個人的にはもっとホラー要素をもっと強めて欲しかった。

インターネット、データーセンターの建設ラッシュ、SNSの暴走と陰謀論者の激増。コロナ禍はパンドラの箱を開けてしまった。従来から続いていたアメリカ🇺🇸社会の分断は、コロナの大流行が加速させてしまった現実を我々は受け入れなければいけない。

コロナ禍の2020年5月、ロックダウンされたニューメキシコ州の小さな町エディントンで燻ぶりながら対立する閉塞感があぶり出す人間関係。前半60分は何も起こらないが、終盤以降は炎上🔥爆破、人間関係の崩壊などが連続する構成。

本作は小さな町の事件として描写しているが、本質的には、世界中の至る所で似たような事件や社会の分断が発生している事のほうが最も恐ろしい事実。
監督はその恐ろしさを炙り出したかったのではないだろうか。

ラストの着地点はある意味、全員がハッピーエンドなのかも…。インターネットやSNSをより加速・暴走してくれるデータセンターの新規オープン、あれだけの悪事を働きながら逮捕されずに、生命を落とさずに、見事に当選してしまった寝たきりの保安官ジョー。そして彼を支える陰謀論者の義母(ディードル・オコンネル)の一人勝ちは強烈な皮肉である。

ジョーを残し、カルト団体の代表者ヴァーノン(オースティン・バトラー)と逃亡した元妻ルイーズ(エマ・ストーン)の勝ち誇ったような笑顔も印象的。陰謀論に囚われた人間が幸せになるって描写も皮肉たっぷり。(妊娠までしてやがる…)

本作は暴力、陰謀論、SNSの暴走がすべてを焼き尽くす炎上スリラーと銘打たれているが、実際に見てみると一触即発のバトルが勃発するアイロニカルな現代西部劇の様にも見える。

陰謀論やデマ、マッチョイズムなどに囚われた馬鹿な登場人物の誰にも感情移入できないキャラクター設定は、一周回って苦笑してしまった。本作はブラックコメディーとして十分に機能していると思う。

(メモ)
・主演ホアキン・フェニックス演じる保安官ジョー・クロスがどうしても、悪人キャラのなぎら健壱にしか見えなくて終始ノイズでした。

・現在公開中のディズニー社の「ズートピア2」もそうだが、陰謀論者が最終的にヒーローとして祭り上げられる映画が多いのは、モヤモヤする…。

くまねこさん
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