「予測不能な展開は楽しめるが、「何を見せられたのだろう?」というモヤモヤが残る」エディントンへようこそ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
予測不能な展開は楽しめるが、「何を見せられたのだろう?」というモヤモヤが残る
コロナ禍でのマスク着用の是非を巡って、市民が対立するような話なのかと思っていたら、IT企業のデータセンターの誘致とか、BLM(Black Lives Matter)のデモとか、小児性愛の犠牲者とかのエピソードが出てきて、一体何の話なのかが中々分からない。
唐突に市長選に立候補した主人公が、決起集会の演説で、政策的な訴えは一切せず、現市長に対する誹謗中傷をまくし立てた時点で、彼が「個人的な恨み」で立候補したことが分かって呆れてしまうのだが、それと同時に、これが、「米国民の政治的な分断」を描くような映画ではないということも明らかになってくる。
やがて、現市長に対する恨みが、自分の思い込みであったことに気付き、自暴自棄になった主人公が、ホームレスや市長親子を殺害するに至って、それまでのモタついた雰囲気が一変し、俄然、犯罪サスペンスとしての緊張感が高まってくる。
このまま、主人公が逃げおおせるのか、それとも悪事がバレるのかということが物語の焦点になっていくのかと思っていると、主人公が黒人の保安官補に濡れ衣を着せる一方で、先住民の保安官が主人公が真犯人だと見抜いたところで、いきなり謎のテロ集団が出てきて、ここでも予想外の展開に驚かされた。
どうやら、テロ集団は、BLMの運動員らしいのだが、いくら警察組織を敵対視しているからといって、保安官を拉致して、爆弾で吹き飛ばした上に、狙撃したり銃撃したりするものだろうかと、その余りの過激さには疑問を感じざるを得なかった。
反撃に出た主人公が、ランボーばりに重機関銃を腰撃ちにする様子も、真剣に銃撃戦を描きたいのか、「笑い」を取りに来ているのかが分からず、戸惑ってしまう。同様に、周囲を警戒しつつも大通りの真ん中を進むという無防備で間の抜けた描写や、頭にナイフを突き立てられるという突拍子もない描写も、やはり、シリアスなのか、ギャグなのかがよく分からなかった。
ラストにしても、意識はあるものの、身体機能を失った主人公は、今後、陰謀論者の義母にいいように利用されるという「生き地獄」を味わうのだろうが、それでも、3人の人物を殺害した彼が、市長として生き長らえることには、どこか釈然としないものを感じてしまった。
せっかくの、エマ・ストーンやペドロ・パスカルの出番が、思いのほか少なかったのも物足りない。
結局、予測不能な展開に翻弄される楽しさは、それなりに感じられたものの、最後まで、言いたいことかがよく分からず、劇場を出る時には、「一体何を見せられたのだろう?」というモヤモヤとした後味だけが残った。
そうですね。
ザコキャラだとばかり思っていた彼が、ラストでいきなりヒーローになる展開には呆気にとられてしまいました。
彼の「その後」を見て、やはり、これはコメディだったのだと確信しました、
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