「“コロナ禍”と言う背景だからこそ、解らなくもないストーリー」エディントンへようこそ TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
“コロナ禍”と言う背景だからこそ、解らなくもないストーリー
『ヘレディタリー 継承』を劇場で初めて鑑賞して以来、監督作品のみならず製作に名を連ねる作品も観続けているアリ・アスターの新作。或いは、普段映画を観る機会が少ない人にもその名前だけは“独り歩き”しているくらい日本でも有名になったような気がしますが、、本作の公開規模は思ったほど大きくはなく、それは私の単なる思い込みか?かく言う私はチケット購入に半日出遅れ、TOHOシネマズ日比谷は好みの席が売約済みだったため今回は日本橋で鑑賞です。
時は2020年5月、COVID-19のパンデミックによってロックダウンとなったニューメキシコ州エディントン(架空の町)。収束の見えない“未知の疫病”に対する恐怖や不安、そしてネット閲覧時間の激増によりそこで拡散される“如何わしくもデカい声”に翻弄され、人々の心理のそこかしこに“火気厳禁”な不穏さを秘めています。そしてその“ファイヤースターター”となるロッジ(クリフトン・コリンズ・Jr.)の奇抜な言動、、いや、確かに当時日本にも「ばらまこう」とニュースになった人がいたな。。と、それは兎も角、暴れるロッジを取り押さえるべく呼ばれた保安官・ジョー(ホアキン・フェニックス)ですが、彼自身もまた持病を理由に“マスク否定”を公然と貫く姿勢は公人らしくもなく、結局、そんな彼の独りよがりで浅はかな言動に引きずられるようにして、徐々にエディントン全体に波及し始め、狭い町は一気に混沌化していきます。
前作『ボーはおそれている』に続き、主人公ジョーを演じるのはホアキン・フェニックス。その印象が強く残っているため、鑑賞前は「今回もまたぶっ飛び過ぎていないか」とやや心配もしておりましたが、自分も経験をしてそれなりに思うところがある“コロナ禍”と言う背景だからこそ、解らなくもないストーリーは意外に取っ付きやすいと感じました。勿論、特に前半における「皆がそれぞれ言いたいことを言う」カオスな状況に、対立構造が分散・拡大しすぎて集中力を削がれそうになりますが、中盤、不意に“引かれたトリガー”をきっかけに悪夢は現実となり、そして突拍子もなく展開して最早映画のジャンルさえ変わって見えるほどの印象。ただ、その“突拍子のなさ”の程度がこちらの予想を程よく上回るレベルのため、決して置いていかれることなく最後まで楽しめます。
と言ことで、アリ・アスターとしては比較的“人を選ばない”内容で観やすい作品だと思います。ただ逆に言えば、これまでの作品に比べると“突き抜ける”ような特徴に欠け、やや物足りなく感じる方もいるかな、とも。また決して共感とは程遠い内容に対し腹を立てる方もいるかもしれず、、安易にお勧めはしづらい作品でありますが、不真面目な私としては傑作とは言えないまでも充分楽しめた作品でした。
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