「正直よく分からない。瓢箪から駒っていうやつか?」エディントンへようこそ あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
正直よく分からない。瓢箪から駒っていうやつか?
アメリカの田舎町を舞台に、2020年頃のアメリカにおける社会的分断を多分に戯画的に描いた作品である。まあ、出てくる出てくる、様々な政治的信条や政治的行動が。
コロナ禍の時期なので、反ワクチン、コロナ陰謀説、そしてペドフィリアの巣であるディープステーツ存在論、2020年5月に起こったジョージ・フロイド事件に伴うブラックライブズマター運動の高まりと暴動、ちらりとながらMAGAも登場する。
そしてベースとして存在する根強い有色人種への差別と女性差別(というよりも女性の身体や心理に対する軽視)。
一言でいうと、これらの背景群の中を、ホアキン・フェニックス演じる保安官ジョーが、自分の権力欲を満たし(市長になる)、妻との関係を立て直すために(というより妻を支配するために)泳ぎ回る、といった話なのだが、肝心の妻が新興宗教にとりこまれてしまうために状況が変わってくる。このあたりからが理解しにくいところなのだか、マスクをつけないものに対しても共感を持って事にあたり一方的に押し付けはしない公平な人物にみえていたジョーが、冷酷で計算高い犯罪者に豹変する。映画は、以降、ジョーが犯罪を犯した後で、強力な相手と戦う流れにかわるのである。
アリ・フォスターはインタビューで、アメリカを分断している思想について映画の中では数多くふれるが、映画製作者としては中立な立場をとると言っている。そのあたりが、どちらかというと右翼的組織に対してはネガティブな展開となった「シビル・ウォー」や「ワン・バトル・アフター・アナザー」とは異なる。
ただ、ジョーが最後に戦う相手については、おそらくはアリ・フォスターの皮肉なのだと思う。この相手はジョーが市長殺害の真犯人として「アンティファ」の名前を挙げたため、いわば瓢箪から駒の形でやってきちゃったということになるのだろう。専用の飛行機で来て、ドローンや爆薬を駆使してジョーを殺害しようとする。凄い組織力と軍事力なのだが、なんでそこまでして一介の保安官を狙う?
アンティファはトランプ政権が各地の暴動の黒幕として認定したテロ組織ということになっているが、アンティファ自体もともとはイデオロギーを表す言葉に過ぎず、そのような実体組織は存在しないといわれている。だから最後にアリ・フォスターがアンティファらしき姿をちら見せしたのはまあトランプに対する皮肉なんだろうね。
まあそういうところも含めて面白い作品ではあるのだが、全部終わったと見せかけて、関係者のかなり数が生き残り、また話がネチネチ続くところ、毎度ながらこの監督のねちっこさにはちょっと閉口した。長いよ。
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