「「信じたい情報」が世界を壊すまで」エディントンへようこそ 伊藤と言えば潤二さんの映画レビュー(感想・評価)
「信じたい情報」が世界を壊すまで
とても面白かった。
『ボーは恐れている』が個人の不安や被害妄想を極端に現実化した映画だとすれば、『エディントンへようこそ』はそれを社会やコミュニティに拡張した“陰謀論版”のように感じた。陰謀論者が恐れている世界が本当に現実になったらどうなるのか。それをドタバタコメディのような語り口で描くことで、私たちが生きている現実社会の歪みが浮かび上がる構成が見事だ。
正直に言うと、『ボーは恐れている』を観たときはうまく咀嚼できていなかった。しかし『ヘレディタリー』『ミッドサマー』もまた、恐怖を具体化して突きつけてくる作品だったことを踏まえると、本作でアリ・アスターの作家性の一貫性をより強く実感できた。
イデオロギーや正義感による分断は、当事者同士を消耗させる一方で、結局は巨大な構造や資本にとって都合よく機能してしまう。その不条理さを、ここまでコミカルで、同時にシニカルに描き切るアリ・アスターの手腕は本当にすごい。
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