「ウェス•アンダーソンが描く 20世紀のフェニキア 欲望と愛憎のザ•ザ•コルダ展」ザ・ザ・コルダのフェニキア計画 Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
ウェス•アンダーソンが描く 20世紀のフェニキア 欲望と愛憎のザ•ザ•コルダ展
えーと、この美術展は美術館内をゆっくりと歩いて見て回るなんてことができません。巨大な額縁は固定されていますが、その限られた範囲の中で絵のほうが刻々と変化してゆきます。その変化の様子を椅子に座ったままで楽しむことができます。変化の様子が面白いと思ったら、102分ほどの時間、それを堪能すればいいし、退屈だったら睡眠をとって疲労回復につとめるもよし、いずれにせよ、有意義な時間が過ごせると思います。
私もまあそれなりに有意義な時間を過ごしてきました(睡眠はとらなかったけど)。でも、よくわからないお話で置いてきぼりをくらってる感はありました。そもそもフェニキア計画って何? 何かのメタファー? とか…… まあでも、そこはそれ、あまり意味のないことを話を前に進めるためにだけ提示してくるのは映画ではありがちのことだから、と割り切って観てると、けっこう楽しめます。おっと思うような美しい絵がいっぱい出てきますし…… 途中からスジを追うなんてヤボなことは断念して、スクリーン上で展開する「よしなしごと」をそこはかとなく眺むれば、あやしうこそ物狂ほしけれ、てなもんでございます。
主人公の悪徳実業家みたいなザ•ザ•コルダ(演: ベニシオ•デル•トロ)が何度も殺されかけて臨死体験をするのですが、む、む、これはディケンズの『クリスマス•キャロル』か、するてぇと、ザザの爺さんもスクルージ爺さんのように真人間になるに違いあるめえ、と思って観ておりました。
終盤になってきたあたりで、劇伴にムソルグスキーの名曲『展覧会の絵』が聞こえてきます。おー、そーか、やっぱり今日は美術館に展覧会を見にきておったのだなと再認識した次第でございます。
で、とどのつまりが、ザザ爺いとその娘は幸せを掴むんですよね。幸せは身近なところにあるんだねって、メーテルリンクの『青い鳥』か、と…… チルチルとミチルは兄と妹で幸せを探して冒険旅行したけど、こっちは父と娘で冒険旅行してたのね、するてぇと、ベニシオ•デル•トロのザザ爺いは青い鳥のチルチル? なんだか幸せな気分になって家路についたのでした。


