「攻撃されてると感じるのか」ザ・ザ・コルダのフェニキア計画 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
攻撃されてると感じるのか
ウェス・アンダーソン監督作はここ数年のはほぼ観ている。
今回は先が読みにくい展開でなかなか面白かった。
世界中で命を狙われる富豪が自分の娘と共にあちこちまわって支援者から金を集める話。
各章ごとに誰々から何%支援してもらうという数値表が出て実際に支援してもらえた数値が書き換えられていく見せ方が面白い。
冒頭から命を狙われ続け最初から部下が上半身吹き飛んで死んだりちょいちょい微妙なグロが入る。これもこの監督の持ち味。
そして主人公のおっさんは死にかけてはモノクロのあの世の世界に行くがすぐ現世に戻ってくる。この絶妙に緊張感がないゆるい展開、ユーモアもこの監督の味だ。
最初のタイトルを出す時点でなかなか観ない真上からの見下ろし構図。主人公が風呂につかっておりその周囲をお手伝いらしき人達が動き回る。床のタイルの模様に合わせたスタッフやキャストの名前表示。
冒頭からこれだけ「この監督の映画だ」と個性出せる人はそうそういないんだよな。
そりゃベニチオ・デル・トロもトム・ハンクスもスカーレット・ヨハンソンもベネディクト・カンバーバッチも出てくれるよ。
あの構図へのこだわりはなんなんだろう。毎回、あの静止する人々よね。
序盤で娘に対して靴箱を使ってこれからやる計画を説明する見せ方は良かった。
まあ死にかけるがどうせ生きてるだろう、という予想通りの感じで進む。が、バスケ対決、輸血しながら交渉、銃弾受けて腹から取り出し、沼に沈むところからの脱出、模型破壊おじさんなど「そうはならないだろ」という展開の連続で飽きさせない。
いや、観る人によっては「次から次へと意味不明な展開で何これ?」な気持ちになるかもしれない。それもこの監督の持ち味だ。
ラストは色々失ったけど小さい食堂をやりながら家族揃って生活しているよ、というほっこりエンドで強引にハッピーエンドに持っていく。落とし所としては綺麗なほう。そんな丸くおさまるのか。
ちょっと都合よく進み過ぎな感があるし題材の割に緊張感がなさすぎるが、でもこういう感じの映画を作れるのはウェス監督だけなんだよな。
あとなんでこの題材、この展開なんだろうと考えた時に。ふと監督が映画を作る資金を集めて映画を撮る時にこんな風に各所から攻撃されてると感じるのかな、と思った。
色々な知り合いに無理矢理言ってなんとか協力を得るも、予期せぬことが次々と起きて、結局最終的にできるのは壮大な計画からだいぶ縮小した街角の小さな幸せでギリギリ満足する話。
