「お金でもなく、宗教でもなく。」ザ・ザ・コルダのフェニキア計画 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
お金でもなく、宗教でもなく。
2025年。ウェス・アンダーソン監督。1950年代。ビジネスで大儲けしている大富豪は自家用飛行機が爆破されて九死に一生をえる。これまでなんども暗殺されかけている男は、修道院にいる娘を後継者として、最後の大事業「フェニキア計画」に乗り出すが、、、という話。
あいかわらずのおしゃれなビジュアルと素早い会話、独特の展開。事業の展開しか考えてない男だが、死にかけるたびに「あの世への入り口」のイメージが表れて、裁かれたり非難されたりして男がわが身を振り返っていく「クリスマスキャロル」みたい筋が一つ。娘(実は徐々に血縁がない可能性が出てくるが)と一緒の行動していくうちに愛情がはぐくまれたり、弟との骨肉のみにくい争いがあったり、いとことの腐れ縁的な愛情があったりという「家族の話」という筋が一つ。もうけすぎていることによって各国家や組織から敵対視されて、スパイを送り込まれたり、暗殺を狙われたりというヒッチコック的「スパイと裏切り」の筋が一つ。
中東らしき砂漠の地を安全に生活できる空間に変える一大プロジェクトを遂行するという映画のプロットは、現実の出口のない中東紛争に対して巨額資金を投入してリゾート地をつくって解決するというトランプの政策を想起してしまうが、主人公は最終的に自腹を切って富も財産も明け渡すこと、修道院の娘や神様が登場して宗教的な善や倫理の道を追求しながらも、最終的には宗教とは関係なく「自分の心の声を聞けば大抵間違えない」というところに落ち着いていること、などは大違い。
お金でもなく、宗教でもなく、結局はひとりひとりがちょっとずつ行動するしかない。しかし、そこに幸せがある。
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