劇場公開日 2025年9月19日

「少し人間らしさを取り戻したウェス・アンダーソン ✕ 機能不全な家族 = なじみのある題材を『アステロイド・シティ』よりはまだ温度を感じて幾分か取っつきすくなった最近のトーンで」ザ・ザ・コルダのフェニキア計画 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 少し人間らしさを取り戻したウェス・アンダーソン ✕ 機能不全な家族 = なじみのある題材を『アステロイド・シティ』よりはまだ温度を感じて幾分か取っつきすくなった最近のトーンで

2025年9月20日
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大好きな彼の初期作品群や以前の作品のようには、もう本当の意味では感動できないのかもしれない。それでも親子や巡る旅に、血と暴力(冒頭のチョンパ退場)など、本作には彼を好きな理由やあの頃の作品に通ずる要素が確かにある。ポスト『グランド・ブダペスト・ホテル』モード益々増していく緻密さ(コントロールフリークさ)を今回は少し抑えることで、それ以前の要素にも原点回帰している。
もちろん本作にも『フレンチ・ディスパッチ』から顕著に感じる困惑も、もう彼の作品には初期の作品のようには心満たされたり、感動したりすることはできないのかもしれないという不安も、常につきまとってはいるのだが。とっつきにくさが増す一方で、オシャレの権化として祭り上げられる人気っぷり。けど、今回は劇場で(少なくとも自分の耳には)イビキ聞こえなかったのも、そういう多少の"人間らしさ"回復ゆえだろうか。
前作『アステロイド・シティ』で感じた、ドラマ性と人間らしさの欠如。作品を追うごとにもう人間じゃなくて人形でよくなる徹頭徹尾無表情なデッドパンと撮影で、生きているのかわからない役者陣の統一した演技のトーン。いわゆる共通性もへったくれもない。という内容に反比例するように、一方で豪華さに拍車がかかるキャストという皮肉っぷりと、ウェス・アンダーソンファミーの拡大は冗談かと思ってしまうほど。
内容としては、セットとLEDスクリーンの中で"世界を股にかける"権力者同士のどうでもいい談合。主人公は、奴隷で富を築き、何者か("元スタッフ")に命を狙われながら6度の暗殺未遂を生き延びた大富豪。指を。そして、見逃してほしくないのが永遠のナード枠マイケル・セラ史上最も格好良くて最強のマイケル・セラ?トム・ハンクスとブライアン・クランストンを並んで見られるのって最高!
"計画"が暗礁に乗り上げ、成功から遠ざかるほどにどこかで覚悟を決める必要が出てきて、家族は本当の家族になっていくし、そこでは真相なんてある意味ではよくなるのかもしれない。今その瞬間を一緒にいられることこそが何よりも大事だから。そんなことで考え方が変わるのか分からないけど、権力者達も本当に大事なものに気付いて、利己的・自己中心的な行いを省みたらいいのに。

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