「韓国人から見た歴史」ハルビン ハムの大臣さんの映画レビュー(感想・評価)
韓国人から見た歴史
伊藤博文を暗殺するまでの、安重根を描いた映画である。脇役の演技は素晴らしかった。日本のスパイとなったメガネ(チョ・ウジン)が命乞いをし、それに心を揺さぶられ殺すに殺せなくなるパク・ジョンミンの演技は素晴らしかったし、日本軍の少佐に捕らえられるも、最後までプライドを持って挑発するイ・チャンソプ(イ・ドンウク)は掛け値無しに、カッコよかった。ただ、主役がちょっと…。なんというか、余りに聖人化されていて、人間味が感じられなかった。捕虜を殺してはならないと常日頃から言っている割に、どんな犠牲が出ても抗日運動は絶対にしなければいけない!と主張するなど、言動に一貫性がない。おそらく、安重根を無謬の英雄として描こうとしすぎているので、内面が全然伝わってこない感が出るのだと思う。あと、日本軍の少佐は余りにも酷すぎる。少佐の下手くそな日本語で途中から映画館で笑ってしまった。というよりも、日本のスパイのメガネの方が日本語が上手であった。あの程度の日本語しか話せないのなら、その辺の演技をかじってるソウル在住の日本人のおっさんにやらせた方が絶対にましである。というより、少佐のキャラクターが余りにも酷すぎる。安重根に執着する余り、事あるごとに「アン・ジュングンハドコダ」とまるで呪文のように繰り返すが、もはやただの妖怪のように描かれている。また、メガネと食事をする時、自分の食べているステーキを手でつかみそれをメガネに渡すシーンがあるが、それはさすがにないんとちゃう?ちょっと野蛮人すぎるやろとツッコミたくなった。また、リリーフランキー演じる伊藤博文も、ちょっと権威主義者風味が足りず、物足りなかった。
さらに、時代考証や季節感がめちゃくちゃであった。メガネを拷問する時に、わざわざ毒マスクを着用して拷問していたが、そもそも毒ガスが兵器として使用されたのはWW1からなので意味が分からなかった。また、舞台は満州のはずなのにサハラ砂漠か?みたいな所を通過したり、暗殺した時は10月のはずなのに、暑そうであったり、また、雪が積もってたりして見ていて疑問を感じることがよくあった。
あと、伊藤博文のセリフに疑問を感じることも多かった。「300年前は、李舜臣がいたが今はいない」と言っていたが、いや、そもそも伊藤博文は李舜臣知らんやろと、その当時多分全然有名じゃなくない?と感じた。
まとめると、脇役の演技は素晴らしいが主役はぼんやりしていて、少佐の演技は酷い。時代考証もめちゃくちゃであり、ツッコミ所はたくさんある。しかし、日本にいるとおそらく理解できないであろう韓国人の歴史観を覗き見ることができる映画であり、その点においては一回見ておいても損はない。(2回見る必要なない)
李舜臣の戦績も誇大妄想だが、韓国では、日露戦争の日本海海戦に勝利した東郷平八郎が英国のネルソン提督に例えて称賛された時に、「李舜臣に比べれば私は下士官レベルにもならないだろう」と述べたという根拠の無い話が、戦後に朝鮮日報の記事が出てから定着しているから、日露戦争当時から李舜臣は有名だったと思ってるんでしょう。
