劇場公開日 2025年7月4日

「次はハングル語を学ぼうと思った。」ハルビン アツサミーさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0 次はハングル語を学ぼうと思った。

2025年7月20日
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鑑賞方法:映画館

知的

映画「ハルビン」を見た。毎年、この時期は「先の大戦」について考えようとしてきた。

 「安重根、アン・ジュングン」は韓国にとっては民族的な英雄だ。「李舜臣」と並び祖国を日本から守った人として。去年、韓国で作られ今夏、日本でも公開された。民族的な英雄を今、なぜ、取り上げ映画にしたのか?韓国では誰もが知る人物だろうし、過去に何度も映画やTVで取り上げられて来たはずだから、そこには何らかの新しいアンジュングン像があるはずだ。

 スペイン語のHistoriaには歴史と物語の2つの意味がある。歴史学は、過去の出来事や社会現象を、史料に基づいて客観的に分析し、その原因や結果、影響を考察する学問だが、置かれている立場や時代で、その解釈や評価、見え方は丸で異なる。歴史は物語だとも言える。
 例えばこの映画のもう一人の主役は伊藤博文だ。山口が生んだ偉大な政治家だ。以前、全国大会で会津若松に行った時、お土産店に伊藤博文公の旧1000円札がカバーに入って展示されていた。そのカバーの上からマジックで国賊と大きく書かれていたのだ。私は福島や会津を東北の一つの県や町程度にしか捉えてなかつたけど、会津は山口県人を当時も今もおそらく良くは思ってないだろう。歴史は、特に負の歴史は物語として代々受け継がれる。国内でもそうなのだから国と国ならなおさらだ。喉に刺さったイギの様に不快で痛い。

 映画の冒頭、参謀中将アン・ジュングン率いる大韓義軍は日本軍との戦闘で大きな勝利を収めた。アン・ジュングンは万国公法に従い、戦争捕虜である日本陸軍少佐・森辰雄らを解放する。
 国際法に従った高潔な安重根。しかしこれをきっかけに同志の中に亀裂が生じ、日本に通じる諜報員を生んだ。名前は分からないが、眼鏡をかけたそのスパイを映画のラストで安重根(私にはあの人物が安重根に見えた、実際にはロシア側に連行されていたはずだけど)は赦すのだ。史実に基づく事かどうかは知らないが、甘さがある男だ。
 安重根は伊藤博文の暗殺には成功した。しかしその事が翌年の韓国併合に繋がり朝鮮半島は日本の領土になった。映画中で伊藤が「わしを消してどうする、愚か者め。」「わしが統治した3年間、儒者が支配した300年」と言ってるが、帝国主義が世界のトレンドだった当時、近代化の遅れは欧米列強の植民地化に繋がる。善し悪しは別として、彼の地の社会インフラを整備し近代化したのは間違いなく日本だ。徹底的に日本化した。
 映画の中でやたら耳につく言葉がある。「同志」という言葉だ。ハングル語ではトンジというのかな、青臭く革命的な響きがする。日本語ならあぁ言った場面は同志ではなく「兄弟」って言うと思った。「兄貴、おう兄弟」。

 つまりこの映画は安重根という祖国の英雄を通して、今の韓国の現状を批判しているのではないか。
・性善説的な詰めの甘さ。
・同志の世界でしか物事を見ない、判断基準の狭さ。
・優柔不断に役に立つものを取り入れる日本と儒教道徳が重くのしかかる韓国。

 今日は参議院選挙の日だ。日本の選挙史上、恐らく初めて「外国人より日本人」「反グローバル化」を前面に掲げ、争点化し、票に結びつけた選挙になった、なるはずだ。私はゼノフォビアではないし、どちらかというと、グローバル化の方だ。ただ、上記した内容を見ると、そうした今の日本のトレンドを私ももろに受けている。
 映画の中で馬に乗るシーンがよく出てきた。ラストも馬に跨り橋を渡って行った。

・勝馬に乗るのがみんな上手いね。そう皮肉っているようにも思えた。

アツサミー
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