「兵端を扇情で」平坦な戦場で uzさんの映画レビュー(感想・評価)
兵端を扇情で
粗筋に対して強烈なタイトルに惹かれて鑑賞。
ポスターや予告編では大人っぽく感じたが、思ったよりは高校生に見えた。
引きの画が多いこともあっただろうが、それも逃げというより感情を明確にし過ぎない意図だろう。
繰り返しの描写で日常を表すなども含めて、切り取り方は非常に良かった。
初々しいカップルの様子から熟女登場で話が動いていくのだが、一点気になることが。
のぶえと智也が既に“致して”いるかどうか、だ。
下世話な意味でなく、それによって話が多少変わってくると思うのだが、結果としては既に経験済みらしい。
これは智也が懇願に応じてしまうリアリティに寄与する反面、話の重さが損なわれてしまったようで少し残念。
そこからお金を払って相手してもらう流れに関しては話がズレてしまった印象。
好きな相手への後暗さというところも一端にあると思うのに、あれで回復しちゃうのはどうなんだ。
しかも、そこで自信をつけてからの謝罪というのは…
相手に頼まれてのことだと話してさえないのにのぶえが許してしまうのも、サスガに寛容すぎる。
明らかに何かある父親の同僚や、寝顔のカットが長すぎるホームレス女性の描き方も半端に思えた。
断れない空気なんてものはなく自分がそう感じてしまっているだけだと、今の自分は理解してる。
ただ、高校生なら仕方ないことも分かるし、それに対する苦悩というのも共感した。
惜しむらくは、その扱い方で事を軽くしてしまった点。
少なくともタイトルやポスターの惹句に見合うだけのものではなかった。
もっとエグく切り込むことができれば、珍しいテーマの佳作足り得たんじゃないかなぁ。
主演2人だけでなく智也の友人2人の男子高校生感など演技はなかなかよかったが、父親役だけイマイチ。
あの空気は実の娘じゃなく出会って2年の連れ子なのよ。