「温かさと寂しさと癒やしをもたらす美しき名画」旅と日々 コウチャンさんの映画レビュー(感想・評価)
温かさと寂しさと癒やしをもたらす美しき名画
かなり評判が良くないから、恐る恐る劇場に来た。三宅監督の前二作は大好きだが、今回は眠くなるのを覚悟して観た。
見終わって、こんなに美しい映画をかつて見たことがあったろうか、と思った。最近なら自分の中では「コット、はじまりの夏」以来かな。単なる映像美というのでなく、余計なものが一切削ぎ落とされて、ピュアそのもの。心の芯のようなところに入り込んでくる作品。人の心に寄り添うことをひたすら追求した映画で、その純度が高いから、究極の美しさを感じたのだと思う。優しくて、あったかくて、そして孤独だった。さらに、夏の海と冬の銀世界が対比されていて、それも美しさを際立たせていた。すごく気に入った。温かさと寂しさで、心の中が一杯になった。最後の方は、心が満たされて脚本を書き始めた主人公にぼくの心が乗り移ったようで、ポロポロと泣いた。癒されたと感じた。
パンフレットを買ったけれどまだもの足りず、劇場内のポスターをスマホのカメラで撮ったが、まだ足りない。もっとこの映画と繋がっていたい、と思いながら劇場を出た。
自分はつげ義春のことは何も知らず、この映画が原作に近いのか遠いのかは分からないけれど、監督は、自分が表現したいものが、この原作を通すことで表現し易くなる、或いはこの原作の世界が土台若しくは下地にあれば、その上に自在に自分が描きたいものを描ける、そう思いながら作ったのではないか。その位、監督の感覚と原作の相性の良さを感じた。
シム・ウンギョンの演技が、悩める脚本家という設定にピシャリとハマり、彼女が生み出したドラマの中のキャラクターが河合優実というのも、どことなく主人公と遠からずの雰囲気で、自然に受容できた。たった一人、俳優としての器用なテクニックを求められた堤真一は、その技術でぼくらを完璧にあの雪深い世界へ連れて行ってくれた。
三宅監督がリアルさを追求すると「ケイコ、目を澄ませて」のように、ストイックで誠意の塊のようなド直球のドキュメンタリー風にもなるし、「旅と日々」のように、ちょっとぼんやりとして、孤独とユーモアに満ちたファンタジー風にもなる。そして、各映画祭での実績が物語るとおり、両作品ともに、エンターテインメントとしても一級品である。その力量や懐の深さに感服するとともに、こんなに気持ちを癒やしてもらい、心から感謝している。
最後に、今をときめく河合優実さんの水着姿(彼女は着やせするのですね!)という意外なプレゼントも用意されていて、もう、何から何まで文句のつけようがない名画だった。
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