劇場公開日 2025年11月7日

「風が吹いている、言葉を求めている」旅と日々 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 風が吹いている、言葉を求めている

2025年11月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2025年。三宅唱監督。①夏の終わりの島になんとなく来ている若い女は、海辺に一人でいる若い男と出会う。何気なくお互いの境遇を話し合う二人。別れが迫った日、二人は台風で荒れた海へと泳ぎ出す。②という映画の脚本を書いた女性は仕事に行き詰っている。旅に出た東北地方の雪国でようやく見つけた民宿は変わった男が1人で経営していた。仕事も進まないなか、何気ない男との話のなかで、錦鯉の養殖をしようという話になって。
①も②もつげ義春原作の物語を元にしている。二つの物語のつなぎ方がすばらしい。旅をする女性の映画(フィクション)を作った女性が実際に旅をする(現実)という構図。フィクションをなぞる現実。言葉で世界をつくりあげることと、身体で体験すること。しかも、フィクション世界のなかの人物(河合優実)も妙にリアルな身体性をもって迫ってくる。また、フィクション世界でも現実世界でも海の波、山の木々、川の流れが、常に風に吹かれて揺れており、ここにしかない物質性を表している。ひとまず、身体/物質の映画だといえるだろう。「自然」の撮り方がすばらしいってことだ。
一方で、フィクションと現実をつなぐ脚本家は言葉を求めている。脚本は書こうとして書けないが、日記のようなモノローグが語られる。その文章が的確で胸に響く。①も②も人物たちに交流が生まれるのは、なにかが起るからではなく、なにげない会話からだ。つまり、言葉/会話の映画でもある。「人間関係」の撮り方がすばらしいってことだ。
三宅監督の作品「ケイコ 目を澄ませて」でも「夜明けのすべて」でも、言葉あるいは書くことが重要なテーマになっていた。この映画もまたその系譜にあるといえるだろう。
いい映画を見た。

文字読み
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