「そこはかとない可笑しみが楽しい」旅と日々 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
そこはかとない可笑しみが楽しい
つげ義春の「海辺の叙景」と「ほんやら洞のべんさん」を原作とする映画。
作者の分身かと思われる人物が登場する以外に共通点のないこの2作品をどうつなぐのか、
と思ったら、上手かった。
* * *
脚本家である李さん(シム・ウギョン)が
監督からの依頼で「海辺の叙景」映画化の脚本を書く、
という場面から始まり、
その映画が30分ほどで終了するとそこは
大学の映画製作にかかわる学科の授業あるいはイベントらしく、
監督と李さんが舞台で学生からの質問を受ける場面――これは意表を突かれた。
そこで李さんは学生から感想を聞かれ、
「私は才能がないなと思いました」とか言っちゃう。
脚本を書いた三宅監督がそう言わせてると思うと、なんか面白い。
実際には、その「映画内映画」の後半は、
画も台詞もまさに原作そのもので、
つげ風味満載だったんだけれど。
そして河合優美の色っぽさについての
魚沼先生(佐野史郎)の述べた感想は、
おそらく三宅監督の感想だったんだろう。
ちなみに原作の舞台は千葉県らしいが、
映画は神津島で撮ったみたい。
* * *
後半(というかメイン)の舞台は、
原作では新潟の魚沼あたり(魚沼先生という名前が原作リスペクトのしるしか)
だが、映画では山形らしい。
短編27ページの原作の本筋は変えず、
行間を膨らませた約50分もまた、とくにその間合いが、
まさしく原作の世界だった。
1967年の作品で、なおかつ
戦前の漫画(たとえば「のらくろ」)のような言い回しがしばしば出てくる原作の台詞が、
シム・ウギョンさんがしゃべると、とってもハマって聞こえたから不思議。
そして、
そこはかとない可笑しみが楽しく。
そういうわけで、
とっても楽しめたのでありました♪
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