劇場公開日 2025年11月7日

「自らの救いを求める物語」旅と日々 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 自らの救いを求める物語

2025年11月9日
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鑑賞方法:映画館

『ケイコ 目を澄ませて』や『夜明けのすべて』の三宅唱監督作品で、シム・ウンギョン主演というだけで、始まってから登場人物の一人が「河合優実っぽいな」と思ったらやっぱり河合優実だったというくらい事前知識を持たずに出かけてきた。

シム・ウンギョンは『サニー 永遠の仲間たち』(2011年)や『怪しい彼女』(2014年)以来目を離せなくなった女優だが、気づけば『新聞記者』(2019年)を契機に日本の映画やドラマに欠かせない存在になっていた。

その彼女が演じる脚本家の李は自らの才能に疑問を抱き始めており、自分の作品を使った大学でのワークショップの後で恩師に悩みを打ち明けたところ「旅でもしてみたら」との助言を受け、ひとり東北の山村に当てもなく出かけていき……。

大きな事件が起きるわけでもなく、ほんのちょっとした冒険があるくらいで、普段の「日々」を淡々と描きながら、その日々の中で感じる漠然としたモヤモヤを「旅」の中で解消しようとする物語でもある。

前半の劇中劇における夏の神津島の海岸シーンと、後半の冬の山形辺りの雪景色シーンの対比によって、艶かしくもどこか死の影を感じるような不安定な精神状態と、旅先で日常生活の物質世界から(そして「ことば」からも)解放され、穏やかになっていく気持ちの対比が描かれているように思える。

そんな世界観を際立たせているのが、アスペクト比が3:4で(言い換えれば、正方形に近く)になっているスクリーン・サイズで、あたかもそこで展開される情景を覗き見しているかのような錯覚を観客に与えて没入感を増幅させている。

2024年の『雨の中の慾情』に続くつげ義春原作漫画の映像化作品だが、つげ作品の不条理的な独特の世界観に半世紀の時間を超えて注目が集まるのは、やはり多くの人々が不安定な社会の中で閉塞感を感じているからなのだろうか?

Tofu
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