劇場公開日 2025年11月7日

「いくら「感じる」映画だと言っても、もう少し理解したかった」旅と日々 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0 いくら「感じる」映画だと言っても、もう少し理解したかった

2025年11月8日
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序盤は、韓国人の女性が脚本を執筆する様子と、それに基づく映像が交互に描かれて、ずっと、この二重構造が続くのかと思っていると、やがて、韓国人の脚本家の物語だけになる。
つげ義春の原作は知らないし、河合優実が、相変わらず「雰囲気」を出していたので、どうせなら、夏の海辺で出逢った少年と少女の物語でありながら、「孤独」を描いているというこの映像作品を、もっと観ていたかったと思ってしまった。
主人公の脚本家は、急死した評論家の形見分けでカメラを手に入れたことで、雪国へと旅に出るのだが、そこで宿泊することになった旅館がユニーク過ぎて笑ってしまう。まるで、時代劇に出てくるような住居の囲炉裏端で、若い女性が、旅館の亭主と雑魚寝することなどあり得ないだろうが、文明から隔絶された古民家での宿泊体験を「売り」にすれば、案外、需要があるかもしれないと思えないでもない。
そうか、脚本家が、この旅館を舞台にした物語を書くことによって、宿泊客を呼び込む話なのかと予想していると、2人で近くの豪邸に鯉を盗みに行った挙句に、旅館の亭主が警察に捕まるという展開になって、呆気にとられてしまった。韓国人の脚本家が、どうして日本で仕事をしているのかといったことや、旅館の主人が、どうして豪邸に住んでいる元妻と別れてしまったのかといったことも、最後まで明らかになることはない。
結局、何を描きたかったのかが、さっぱり分からなかったのだが、主人公のモノローグにあったように、「言葉から逃げること」が旅の真髄であるならば、旅を描いたこの映画も、評論家が言っていたように、「考えるのではなく、五感で感じる」べきなのだろう。
そういう意味では、雨が降る海の冷たさや、雪深い山里の寒さ(俳優の息が白い!)は、確かに感じ取ることができたのだが、それでも、もう少し、物語の感想を言語化したかったと思えてならない。

tomato
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