劇場公開日 2025年6月27日

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「新しいドニヤに幸あれ」フォーチュンクッキー TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 新しいドニヤに幸あれ

2025年7月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

劇場でトレーラーは流れていたはずですが、記憶になくて最近までノーマークにしていた本作。ところが、RottenTomatoesで検索してみるとかなりの高評価であることを知り、慌てて上映予定を確認。と言うことで、会員サービスデイの本日、ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞です。
なお、原題(英題)である『Fremont』は、本作の主人公であるドニヤ(アナイタ・ワリ・ザダ)が現在、生活の拠点としているアメリカ・カリフォルニア州の都市名。そして、邦題に採用されている『フォーチュンクッキー』はドニヤが働く工場の製品であり、またこの物語を展開するための重要なツールです。
アフガニスタンの米軍基地で通訳として働いていたドニヤ。作品ではごく簡単に経緯として語られるだけですが、彼女はタリバンからの迫害を逃れて命辛々出国し、前バイデン政権によって発給された特別移民ビザ(SIV)でアメリカへ入国することが出来たアフガニスタン難民です。そして、ドニヤを演じるアナイタ・ワリ・ザダもまた「ドニヤと似た境遇」であることを(鑑賞後に)知ってより感慨深く、改めてトランプによる「入国禁止措置」に反感を覚えるわけですが、、、ま、日本の政策もまた他国を非難できる立場にはなく、この件は一旦置かせて頂くこととして。。。
冒頭、同僚で友人のジョアンナ(ヒルダ・シュメリング)からの「ブラインドデートの誘い」をにべもなく断るドニヤ。極力、アフガンコミュニティから出ようとせず、ただただルーティンな生活を過ごす彼女は、自分に付きまとって離れることのないバックグラウンドに苛まれて、不眠に苦しむ日々を過ごしています。ところが、いくつかの「変化をもたらす」きっかけがあって、自分とは出自や立場の違う人たちと会話を交わすことが増えていくドニヤ。初めのうちは「理解されるはずがない」という頑なさが邪魔をするのですが、そんな彼女に理解を示して諦めない存在達によって、ネガティブ一辺倒だったドニヤの心理が少しずつ変化を見せ始めます。
そして中盤以降、波風を避けるように生きていた「以前のドニヤ」からは思いもよらない「ある仕掛け」、からの「決意の行動」。予想外の展開にだって決して失意のまま終わることなく、何ならそれを自らのオポチュニティに変えられる「新しいドニヤ」はもう無敵感さえあって素敵。だからこそ、ドニヤのこれからに幸福(fortune)を願うと共に、改めて世界に蔓延る「不条理な現実」から目を逸らしてはいけないと気づかせてくれる本作。観逃さずに本当に良かったです。

TWDera
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