「ダブルミーニング、トリプルミーニング」兄を持ち運べるサイズに 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
ダブルミーニング、トリプルミーニング
もどかしい気持ちを、
まっすぐに不器用なまま相手に伝えること、
その難しさにカメラを向け続ける。
カメラは〈ひたむきさ〉や〈いじらしさ〉、
〈健気さ〉そして〈滑稽さ〉までも逃さず、
延々とその表情を追い続けて、
作品全体を使って感情の輪郭を縁取ろうとしている。
具体的なシーンで言うと。
「おかあさんはお話しがあります!」
一言で、子どもの未来まで一望するような〈いじらしさ〉を、
たった一カットで射抜く精度、技術、
その演出と芝居に息を呑む。
〈滑稽な〉兄を持ち運べるサイズにしながら、
同時に〈ひたむきさ〉までも持ち運べる〈健気な〉サイズにする主人公。
このバランス感覚こそが本作の核心のひとつであり、
そこには周囲の正論も、
安易な好感度も入り込む余地がない〈持ち運べるサイズ〉というダブルミーニング、
作品全体で縁取ろうというスタンスは、
トリプルミーニング以上の意味が、
あるのかも知れない、
不器用だがその誠実さに胸を突かれる。
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