「ワンブロック先の同居人」アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓 sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
ワンブロック先の同居人
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アルメニア---1915年のオスマン帝国によるジェノサイドはアトム・エゴヤン監督の「アララトの聖母」やファティ・アキン監督の「消えた声が、その名を呼ぶ」でも描かれてきましたが、過去から他国に蹂躙されてきた歴史を持つ国。最近まで隣国とのナゴルノ=カラバフ紛争が続いていたことも記憶に新しいです。
個人的には私の敬愛するショーン・ベイカー監督の常連俳優で、お気に入りでもあるカレン・カラグリアンの出身地でもあります。
主人公チャーリーは極めて理不尽な状況でも絶望せずに、少しでも興味を持てることを見つけ、器用な手先を駆使してポジティブに生きようとします。その姿勢に純粋に感動させられます。
作業場の石をズボンの裾に隠して持ち帰るシーンや刑務所内に仲間を増やしていくくだりは「ショーシャンクの空に」を想起させます。
看守夫婦とまるで同居人のように共に食事をし、洗濯をし、夫婦の不和には心を痛め、それをとりなし、子供の誕生を祝う。小窓を通しての生き生きした描写に我々観客もいつしか巻き込まれ、共感を覚えます。
釈放後は嫌な思い出から逃れるために、すぐにでもアメリカに帰国しても良さそうなのですが、アルメニアに留まる決心をしたチャーリー。この国の過酷な歴史が自身の体験と重なり、神聖なるアララト山の霊性が民族の矜持を呼び覚ましたのかもしれません。
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