「重い話題を扱う割に断り書きがない、一部の理解が困難などかなり厳しいか。」脱走 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
重い話題を扱う割に断り書きがない、一部の理解が困難などかなり厳しいか。
今年147本目(合計1,688本目/今月(2025年6月度)10本目)。
日本においては、南北の「言語の違い」はある程度知っているだけであって、それ以上知っている方はそもそもそこにアンテナを張っているとか(ハングル検定の上位級(上位級に「限り」南北どちらの回答も整合性がある限り正解。下位級では「南の表現」のみ)、あるいはその関係者、行政書士(外国人取扱い関係)といった特殊なカテゴリ)になってくるかなと思います。
※ 以下、断りがない限り「北朝鮮」「韓国」の名称を用います(必要がある場合のみ、断ってから別の表現を使用)。
ストーリーとしては、北朝鮮の韓国に近い部分から脱走(というか、「南韓」(=韓国)に逃げる)兵士とそれを組織する相手との攻防、といったところで、ロケ場所自体は韓国のはずですが、ほぼ「場所自体」は北朝鮮が想定されているものと思います。
このようにストーリーがある意味単調な部分があるし、ストーリーがわかりやすいところ、また、一部の残酷な表現についても配慮がされている(この映画は一般指定)とはいえ、小学生などが観ることはおよそ想定ができないので、やはり大人向けということになろうかと思います。
個人的には、「ある程度、「北」に関する理解、知識がないと何を言っているのか不明」という部分がやや減点対象に来るかなと思います。また、この手の映画は特にセンシティブであることから、「架空の国です」とか、「政治的意図はありません」といった部分はしつこいくらいに出てくるところ(問題提起映画、ドキュメンタリー映画等、それを扱うこと自体に意味があるものは除く)、これらが「一切存在しない」点も、ちょっとどうかな、といったところです。
採点に当たっては以下まで考慮しています。
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(減点0.2/「リさん」が指す意味・表記が南北で異なることの配慮)
韓国・北朝鮮では日本でいう姓名の「姓」が少なく珍しい姓は別として、上位有名なところで8割9割を占めます。この例は「李さん」ですが、日本では漢字の類推から「リさん」と読むことはままありますが、韓国では「イさん」です。一方で北朝鮮では「リさん」です(映画内では「リさん」扱いで統一されているので、おやっと思うことになる)。
このことは言語政策や南北の表記、発音ルールといった細かいことになってくるので、ある程度の字幕の誘導が欲しかったです(韓国でもこの程度のことは南北の違いとして教えるのだろうと思いますが、それがいざ韓国から見た場合の(北朝鮮を除く)隣国である日本では、このことは(コリアタウン等、一部の地域に接する人以外では)一般常識ではない)。
(減点0.2/「希望の声」といったラジオ放送が何を意味しているか理解が難しい)
この部分は実は架空名称ですが、韓国、北朝鮮ともにお互いに隣国に対して「この国にいらっしゃい」というような宣伝放送は流しています(特に韓国→北朝鮮に関しては、兵士の脱走を示唆するような内容が多い。場所によるが)。また、日本ではいわゆる拉致問題との関係で「しおかぜ」等のラジオ放送がされていますが、ここでは拉致問題の一環としての扱いです(なお、北朝鮮側は一般のラジオでは聴取ができなくするようにジャミングをかけているといわれます)。
このことも一般常識ではないので、ある程度対応が欲しかったです。
(減点0.2/「出生身分」の意味が非常にわかりづらい)
要は、北朝鮮における政府側の平民の監視対象の区分分けで、「国の政治体制に協力的」「否定的」「真ん中程度」の3つに大きく分かれるとされますが、脱北者の証言から50種類、あるいは100種類くらい細かくさらに分かれるといわれます。この部分は日本で見る場合、漢字文化圏であることから漢字からの類推は一応可能ですが、何を意味するか一般的に理解が難しいです。
(減点0.1/映画全般の配慮について)
最初にも書いた通り、アクション映画でありよく見るタイプの映画ではありますが、この手の映画はやはり最初に「架空の国です」とか何らか表現がいるのではなかろうか、と思えます。
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