劇場公開日 2025年6月20日

「北側視点から自由の尊さと色あせる資本主義の輝きを問う佳作」脱走 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0北側視点から自由の尊さと色あせる資本主義の輝きを問う佳作

2025年4月16日
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鑑賞方法:映画館

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北朝鮮の軍事境界線を警備する除隊間近の軍曹ギュナム(演:イ・ジェフン)が自由を求めて南への脱走を図るサバイバルアクション。

今時めずらしい97分という短尺ですが、説明的で冗長な部分はできるだけ削ぎ落し、【脱走】にフォーカスしたソリッドでテンポ感ある演出は白眉で好感が持てます。

数百人にも及ぶ一個中隊との追跡シーンは、シルベスター・スタローン『ランボー/怒りの脱出』(1985)を想起させるサバイバルアクションにしあがっておりアクション映画としても高水準。

追う側の少佐リ・ヒョンサン(演:ク・ギョファン)は幼なじみでもあり、親同士は特権階級の雇い主と運転手(使用人)の関係、そして将来を有望視されたピアニストへの夢や、意中の同性への想いも北で生き残るため全て断ち切る、ギョナムとは背反する典型的な北側の生き様を描くことで主人公・ギョナムとの濃淡が上手く描かれています。

本作は北側からの視点から資本主義国の南側をのぞく体裁で、自由を謳歌できる資本主義の尊さと素晴らしさ、そして、ほんの一部の大企業のみが富を得て栄え、その大企業に就職するためだけの失敗を許されない過熱する受験戦争や、たった一度の些末な失敗でさえも再挑戦が困難な世相に一石を投じるテーマ性も上手く昇華させていますね。

矢萩久登
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