劇場公開日 2025年6月28日

「ラスト・シーン」選挙と鬱 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

未評価 ラスト・シーン

2025年8月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 2022年の参院選時、れいわの山本太郎氏に煽られる様に水道橋博士が立候補し、それを『ひいくんのあるく町』『東京自転車節』『フジヤマコットントン』の青柳拓監督が密着撮影するという話を聞いた時、「これは面白い事になりそう」とワクワクしました。これは政(まつりごと = 祭り事)への野次馬的好奇心です。

 そして、比例区でギリギリ滑り込み当選したとの報を受け、「うへぇ~、映画として持って来いのラスト・シーンだよな」と感じ入りました。いつ頃公開されるのかなと待っていたところ、何と博士が鬱症状で議員職を休み、やがて辞職するとの続けざまのニュースが飛び込んで来ました。「ええっ、映画もお蔵入り?」と、申し訳ないのですがご本人の事よりそちらが気になりました。しかし、療養の後、博士は無事復帰し、映画も改めて追加撮影・編集されてこの度の公開となりました。

 一緒に観た我が家の妻が、鑑賞後、

 「博士は根っから真面目な人なんだね。あれだったら心を病んでしまうよ」

と語っていました。そうです、本作でも博士の生真面目さが滲んでいるのですが、その一方で「芸人」としての性も迸っています。選挙カーから麻生や安部の物まねで投票を呼び掛ける姿には大笑いしてしまいました。三又又三さんの場をわきまえぬ様な「応援」カラオケ歌唱ぶりも傑作です。

 生真面目な選挙戦でのそうした軽みを捉えるには青柳監督のカメラが最適です。いつも軽快なフットワークとすっとぼけた様な空気を失う事無く対象に迫り続けます。それ故に、深刻な「鬱」以後の映像も重くなりすぎる事がありませんでした。

 そして、博士の背中を後押しながら自分自身も奮い立たせるラスト・シーンがカッコよかったな。監督はこの台詞で終わることを狙ってたんじゃないかな。

La Strada