「【再現VTR】これなら世界仰天ニュースで良い」でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男 Peterさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0【再現VTR】これなら世界仰天ニュースで良い

2025年7月1日
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鑑賞方法:映画館

題材となった事件の概要を把握してから鑑賞。
三池監督は当たり外れが大きいが、実話を元にしたのであれば、悪癖の出る余地が少ないはずだと期待していた。

結果は、ただ事件をなぞるだけで制作側が独自に描きたかった事を見出せず、それに伴って鑑賞側の解釈も広がらない、再現VTRのような2時間だった。
ただし、同伴者や周囲の反応を観るに、映画だけでは事の顛末が分かりづらい人もいたよう。
期待通り、三池崇史監督の悪ふざけが顔を出さなかったのは幸い。

本作を観た誰もが連想するであろう是枝裕和監督・坂本裕二脚本の『怪物』は、この事件に着想を得たのではないかと思うぐらい、「子供が保身のために吐いた嘘によって、無実の教師がいじめ加害者にされる」といったプロットが似ている。

ただし、今回は物語(事件)の核心部分が子供にではなく、柴咲コウ演じる母親にあるという点が大きく異なるのだが、そこが深く掘り下げられない。

実際にあった事件を題材にする場合、どこに面白さが生じるかと言えば、そのディテールの掘り下げであろう。
分かりやすく例を挙げれば、『冷たい熱帯魚』の犯行方法や主犯格のキャラクター、『地面師たち』の騙しの手口などだ。

今回で言うなら、柴咲コウ演じる母親の動機や家庭の様子(主に子供への接し方)、弁護団の法廷戦術、そして何よりも原作であるルポルタージュを執筆した福田ますみ氏の取材方法がそれにあたるであろう。
※本作では福田ますみ氏にあたる記者は登場せず、真実を究明する役割は小林薫演じる弁護士に集約させている。

そもそも、その核心(動機)自体が身勝手極まりなく、とても共感を得られるものではないために、綾野剛演じる教師にしてみれば、異常な人物に絡まれた不運かつ理不尽な出来事であったという他ない。

元となった事件は2003年に発覚しているが、冤罪モノで言えば、2007年には『それでもボクはやってない』が公開されているし、マスコミによる"いきすぎた報道"は幾多の映画で演出されてきた。
今なら間違いなくSNSが絡んで来るであろうが、映画はあくまで当時の出来事として描いている。
つまり、現在に通じる普遍的かつフレッシュなテーマや視点は存在しない。

そのため、やはり柴咲コウ演じる母親の異常性を掘り下げでもしなければ、2025年にこの題材を映画にする事で何を伝えたかったのかが分からない。
(母親の幼少時代とオーバーラップさせて、それが一体何になる)

言わずもがな、教師の方の無実が証明されたのは何よりだが、事件のあらましを伝えたいだけなら、本作よりも10年早く『世界仰天ニュース』で観られれば良かった。

最後に…
GAMECUBEやPlay Station2をこれ見よがしに登場させるなら、柴咲コウ演じる母親の自宅のキッチンと亀梨和也演じる記者のサングラスは時代考証的におかしい。

円熟期に入った綾野剛の演技に+星1つ

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Peter
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