「他人事では済まされない、身近な恐怖」でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男 きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
他人事では済まされない、身近な恐怖
普段は日常に埋もれて静かに眠っている狂気があることをきっかけに目覚め、瞬く間に取り返しのつかないレベルに達してしまう
集団心理と同調圧力の国・日本に起こりがちな事件であり、誰しも巻き込まれる可能性を持っている
実は自分も前職で似たようなことがあった
事の重大さは比較するのが恥ずかしいほど小さいものの、自分に非は全くないのに周囲から責められ続け、人間不信に陥りそうになった(他にも色々あって一年半ほどで辞めてやったぜ!w)
そんなわけで共感しながら観ていたけど、この映画が凄いな~と思ったのは結審の瞬間まで心のどこかで疑ってしまうところ
(※このレビューは「ネタバレ」にしているので読んで頂いている方は観賞後だとは思いますが、もしこれから観る方がいらっしゃればギリギリまで双方を疑うことをオススメします)
ストーリーは法廷内か回想シーンが多く、過剰な演出などもなく淡々と話が進み、じっくり考えながら観ることができてとてもよかった
欲を言うと氷室家内の描写はもう少しほしかったかな
ただ、律子が学生時代を思い出しながら答弁するシーンに彼女の事情が凝縮されているのかな、とは感じた
キャストは、これ以上ないくらいの好配役!
中でも特筆すべきは綾野剛さんと柴咲コウさんの名演!
薮下先生役は綾野剛さんじゃないと成り立たないんじゃないかな、とさえ思った
自分の大好きな悪役No.1の小澤さんも、出番は少ないけど期待に違わぬ存在感で満足(笑)
最後に
この話は目に耳にしていたかもしれないのに全く記憶になかった
そして、もしかすると自分もその当時「ひどい教師だな」と感じていたかもしれない
そう思うと、情報というものはできるだけ多方面の角度から見ないといけないものだと改めて考えさせられた作品だった
【追記1】
観賞後数日経ち、当時の事件の検索などもしていたら記憶が甦りました(遅すぎ…)
やはり自分は当時「ひどい教師」だと感じていたこと、その後の展開に違和感を覚えたことも思い出しました
そして、『モンスターペアレント』と言うワードが世間に流布するようになったきっかけの一つがこの事件だったように記憶しています
一つ気になるのは、その時の違和感の原因は何だったのか…これから時間をかけて自分に問いたいと思います
【追記2】
どうでもいいことなのでレビュー本文には書かなかったけど、着ていった服が拓翔くん登場時のものと若干被ってしまい、ちょっと恥ずかしくて終演後最後まで席立てなかったチキンヤローなのでしたw
uz様
コメントありがとうございます!
おっしゃる通りで、刑事事件ではないので結局第三者には真相はわからないんですよね…それが裁判だと言えばそこまでなんですが
この映画が『事実をもとにしたフィクションである』ことを前提で言うと、最初の暴力シーンが本当は真実の可能性だってありますし
観終わった後でもこうして考えさせてくれる映画って希少だなーと思いましたね
結審に到るまで、“嘘”が暴かれることはあっても“真実”が証明されることはないんですよね。
世の中には物的証拠がなく状況証拠で判断せざるをえないことも多い。
結論が出てすら「もしかしたら…」を完全に消し去るべきではないのかもしれません。