劇場公開日 2025年6月20日

「不動産のように、心も土地も生かす視点」秘顔 ひがん 林文臣さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5不動産のように、心も土地も生かす視点

2025年7月22日
iPhoneアプリから投稿

『ひがん』は、一見静かで淡々とした人間模様を描いていながら、心の奥深くを突いてくる作品だ。地方の町を舞台に、人々の“想い残し”や“癒えぬ傷”が、それぞれの場所や関係性に深く結びついている。この映画を経営者として観た時、私は「人の心」も「土地」も、適切に整え、活かす視点が必要だと痛感した。

映画の中で象徴的なのは、使われなくなった古い家屋や空き地。これはまさに、現実の日本が抱える不動産問題と重なる。人口減少、空き家問題、地方の地価下落。感情のこもった土地が“放置”されていく様は、まるで人の感情が置き去りにされているようにも映った。

経営とは、価値の再発見である。不動産業でも「売れない土地はない。活かしきれていないだけだ」という考えがあるように、人の想いや関係性も同じだ。放置された心や土地にこそ、再生の余地がある。『ひがん』の登場人物たちが、自分と向き合い、古い縁や記憶と再接続していく姿は、経営におけるリブランディングや再投資と通じる。

経営者の目線で観ると、この映画は“不動産的な再生”の物語でもある。何を活かし、何を手放すか。それは土地も心も共通する、普遍的なテーマだ。

林文臣